小倉右一郎

小倉右一郎：日本の彫刻界を彩った巨匠

小倉右一郎（おぐら ういちろう）は、1881年（明治14年）に香川県で生まれ、1962年（昭和37年）に81歳で生涯を閉じた彫刻家です。彼は、日本の近代彫刻界において重要な足跡を残しました。

生い立ちと修業

小倉は、香川県立工芸学校で美術の基礎を学んだ後、東京美術学校（現在の東京芸術大学）彫刻科に進学。1907年（明治40年）に卒業しました。翌年の1908年（明治41年）には、文展に「指導」という作品で初入選を果たし、その才能を早くから開花させました。

才能の開花とロダンへの師事

1913年（大正2年）には、大正博覧会に「霹靂」を出品し、二等銀牌を獲得。その後も官展で次々と入賞を重ね、1916年（大正5年）の第10回文展では「闇路の人々」が特選に選ばれるなど、その実力を確固たるものにしました。

1920年（大正9年）には、さらなる飛躍を求めて渡仏。フランス近代彫刻の巨匠であるオーギュスト・ロダンに師事し、その薫陶を受けました。ロダンの影響は、小倉の作風に深みと奥行きをもたらし、その後の作品に大きな影響を与えました。1921年（大正10年）に帰国後は、滝野川彫刻研究所を設立し、後進の育成にも力を注ぎました。

帝展との関わり

1928年（昭和3年）には、帝展改革を訴えた朝倉文夫とその門下が帝展への出品を取りやめた影響で、小倉の門下生の入選が増加しました。小倉自身も帝展会員となることが有力視されましたが、これは実現しませんでした。しかし、1932年（昭和7年）には、帝展に彫刻『夢』を無鑑査で出品。この作品は、国境に建てられた標識をモチーフとし、菊花紋章の上に大日本帝国の文字を刻み、天使を配したものでした。しかし、菊をモチーフにしたことが原因で検閲を受け、皇室や国家体制を批判する意図はなかったにも関わらず、自主撤去を余儀なくされました。この事件は、当時の社会情勢や美術に対する検閲の厳しさを物語る出来事として記憶されています。

戦後の活動と晩年

第二次世界大戦後、小倉は故郷の香川県に戻り、1948年（昭和23年）には高松工芸高校の校長に就任しました。また、香川県工芸美術総合展の審査員を務めるなど、香川県の美術振興に大きく貢献しました。ブロンズ彫刻を得意とし、「三土忠造像」や「弘法大師像」など数々の名作を残しました。木彫や石彫も手掛け、「靖国神社忠魂碑」などの碑や仏像、静物、裸婦像など、幅広いジャンルでその才能を発揮しました。

小倉右一郎は、その生涯を通じて日本の彫刻界に多大な貢献をし、多くの後進を育てました。彼の作品は、現在もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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