小倉敏雄

小倉敏雄（おぐら としお）氏は、1940年（昭和15年）5月5日に生を受け、2021年（令和3年）6月4日にその生涯を閉じた日本の政治家です。茨城県の出身で、特に同県に位置する下妻市において、市長として合計2期の任期を務めました。

若年期には、日本大学の理工学部で専門的な知識を修めました。学業を終えた後、小倉氏は地元である茨城県下妻市に戻り、実業家としての道を歩み始めました。自ら自動車部品加工会社を立ち上げ、その経営者として地域産業の一角を担いました。事業経営で多忙を極める中でも、地域社会への貢献にも熱心に取り組みました。下妻市の監査委員として公正な市政運営を監視する役割を担ったり、茨城県立下妻第二高等学校のPTA会長を務めて教育環境の向上に尽力するなど、多岐にわたる地域貢献活動を通じて、市民からの信頼を得ていきました。

小倉氏が地方政治の表舞台へと立つことになったきっかけは、当時の下妻市政を揺るがす出来事でした。2002年（平成14年）2月、現職の下妻市長が、市立図書館建設工事の入札を巡る情報漏洩に関与したとして、競売入札妨害の容疑で逮捕されるという事態が発生しました（この事件は後に「業際研事件」として知られます）。この異例の事態により市長が不在となり、市政に対する市民の信頼は大きく損なわれました。

この混乱を収拾し、新たな市政を担うリーダーを選出するため、逮捕から約2ヶ月後の同年4月、下妻市長の出直し選挙が実施されることとなりました。地域の実業家であり、市民生活に近い分野で貢献を続けてきた小倉敏雄氏は、この危機的な状況を前に、自らが市政の立て直しを担うべく、市長選挙への立候補を決断しました。この選挙は、実に17年ぶりに下妻市長の座を巡って候補者同士が競い合う選挙戦となり、市民の大きな注目を集めました。対立候補には、長年市議会議員を務め、市議会副議長の経験も持つ有力者がおり、選挙戦は激しいものとなりましたが、小倉氏は市民の期待を背に受け、見事にこの選挙戦を勝ち抜き、下妻市長としての初当選を果たしました。

初当選後、小倉氏は約4年間の任期、下妻市の市政を運営しました。そして2006年（平成18年）に再び実施された市長選挙では、他に立候補を届け出る者がおらず、無投票での再選となりました。これにより、小倉氏は通算で2期、約8年間にわたり下妻市の行政のトップとして、市民生活の安定と地域の発展を目指した取り組みを進めました。2期目の任期満了をもって、2010年（平成22年）に下妻市長の職を退任しました。

市長退任後は、第一線での政治活動からは身を引かれていたと見られます。そして2021年（令和3年）6月4日、享年81歳で亡くなりました。地元下妻で実業家、地域活動家として活躍し、市政の混乱期にリーダーとして市民の負託を受け、2期にわたって市政を率いた人物として、その功績は語り継がれています。

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