小寺融吉

小寺融吉（こでら ゆうきち）は、1895年（明治28年）12月8日に東京で生まれ、1945年（昭和20年）3月29日に没した、日本の舞踊研究家、民俗学者です。実業家である小寺芳次郎の四男として生まれました。

教育面では、開成中学校を卒業後、1918年に早稲田大学文学部英文科を卒業しました。彼は、歌舞伎舞踊や民俗舞踊といった日本の伝統芸能に深く魅了され、その研究に生涯を捧げました。

1927年には、民俗学者の柳田國男、折口信夫らと共に「民俗芸術の会」を結成し、機関誌『民俗藝術』を創刊しました。この活動を通して、日本の民俗芸能に対する関心を高め、その学術的な研究を推進しました。小寺の活動は、単に舞踊を研究するだけでなく、その文化的、歴史的背景までを深く理解しようとするものでした。

小寺の兄弟には、実業家である小寺駿吉、俳優の中村伸郎が兄として、経済学者の小寺廉吉、ドイツ文学者の小寺健吉が弟としています。この事からも、彼の生家が文化的な活動を支援していたことが伺えます。

小寺融吉は、数多くの著作を残しており、その内容は多岐にわたります。初期の著作では、『近代舞踊史論』（1922年）や『舞踊の美学的研究』（1928年）など、舞踊の歴史や美学に関する理論的な考察を展開しました。また、『芸術としての神楽の研究』（1929年）では、神楽という日本の伝統的な芸能を民俗学的な視点から分析しました。

1930年代には、『をどり通』（1930年）、『日本近世舞踊史』（1931年）、『をどりの型』（1933-1934年）などを発表し、日本の舞踊の歴史や形態について詳細な研究を行いました。さらに、『日本民謡辞典』（1935年）や『郷土民謡舞踊辞典』（1941年）では、日本各地の民謡や舞踊を網羅的にまとめ、これらの文化を後世に伝える上で貴重な資料となりました。

晩年には、舞踊の歴史をまとめた『日本の舞踊』（1941年）や、舞踊の評論をまとめた『おどりの型と評論』（1975年）などを発表しました。これらの著作は、小寺の舞踊に対する深い理解と情熱を示すものです。

小寺融吉は、日本の舞踊研究、民俗学の分野において多大な貢献をしました。その研究は、今日の舞踊研究、民俗学研究においても重要な基盤となっています。彼の業績は、日本の伝統文化を理解し、尊重する上で欠かせないものと言えるでしょう。

主な著書

『近代舞踊史論』(1922年)
『児童劇の創作と演出』(1928年)
『舞踊の美学的研究』(1928年)
『芸術としての神楽の研究』(1929年)
『をどり通』(1930年)
『日本近世舞踊史』(1931年)
『をどりの型』(1933-1934年)
『をどり名曲解説 第1冊』(1935年)
『日本民謡辞典』(1935年)
『郷土舞踊と盆踊』(1941年)
『郷土民謡舞踊辞典』(1941年)
『日本の舞踊』(1941年)
『舞踊の歩み』(1950年)
『おどりの型と評論』(1975年)
『郷土舞踊』(1975年)
『民族舞踊研究』(1975年)

共著

『をどりの小道具』(1948年) 宮尾しげを、新井国次郎共著


参考文献

『日本近代文学大事典』(1984年) 講談社
* 鈴木正崇「『民俗藝術』の発見ー小寺融吉の学問とその意義」『明治聖徳記念學會紀要』復刊第52号、 明治聖徳記念學會、2015年

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