小峰元

小峰元（こみねはじめ、1921年3月24日 - 1994年5月22日）は、日本の青春推理小説作家として知られています。兵庫県神戸市出身で、本名は廣岡澄夫。姫路商業学校と大阪外国語学校（現・大阪大学外国語学部）スペイン語科を卒業後、貿易商や教員を経験しました。その後、昭和18年に毎日新聞社に入社し、大阪本社編集局整理部デスク、高松支局、金沢支局などを経て大阪本社編集委員を務めました。作家の長井彬は、小峰の後輩にあたります。

太平洋戦争終結直後から短編小説の執筆を始め、1948年には雑誌「百面相」で「仮面の花嫁」を発表、同年に「百万塔の秘密」を刊行しました。その後も少年向け小説を発表し続け、毎日新聞社在職中の1973年、『アルキメデスは手を汚さない』で第19回江戸川乱歩賞を受賞。これが青春推理小説作家としての出発点となりました。この作品は後にテレビドラマ化もされています。1994年、リンパ腫のため73歳で亡くなりました。

小峰の作風は、軽快な筆致で高校生を中心とした若者を描いた青春推理小説に特徴があります。兼業時代は短編が中心でしたが、乱歩賞受賞後専業作家となると長編を多く手がけるようになりました。その作品群は、若者たちの青春を鮮やかに描き出し、同時代の読者から高い支持を得ました。

多くの作品が青春小説の枠組みにおさまる一方、『ソロンの鬼っ子たち』は政治と新聞社の内幕を描いた社会派ミステリーとして異彩を放っています。また、『パスカルの鼻は長かった』では主人公を自身と同じ名前にしていたり、『ユークリッドの殺人学原論』で各章のタイトルに歴代乱歩賞受賞作品名を用いたり、『クレオパトラの黒い溜息』を日本初の横書き小説として発表するなど、実験的な構成を試みた作品も多く見られます。

小峰元は、多くの推理作家に影響を与えました。東野圭吾や岡嶋二人といった著名な推理作家も、エッセイや自伝で小峰の作品について触れています。小峰の死後、長らく絶版となっていた作品がいくつかありましたが、2006年には『アルキメデスは手を汚さない』が復刊され、再び読者の手に届くようになりました。

小峰元の作品リストには、『少年探偵小説　百万塔の秘密』（1948年）、『アルキメデスは手を汚さない』（1973年）、『ピタゴラス豆畑に死す』（1974年）、『ソクラテス最期の弁明』（1975年）、『パスカルの鼻は長かった』（1975年）、『ディオゲネスは午前三時に笑う』（1976年）、『親不孝のすすめ　青春の独立宣言』（1977年）、『プラトンは赤いガウンがお好き』（1977年）、『ヒポクラテスの初恋処方箋』（1978年）、『イソップの首に鈴をつけろ』（1979年）、『パンドラの恋愛能力共通一次テスト』（1979年）、『ヘシオドスが種蒔きゃ鴉がほじくる』（1981年）、『青春抒情死抄　長編ユーモア・ミステリー』（1983年）、『クレオパトラの黒い溜息』（1984年）、『ソロンの鬼っ子たち』（1985年）、『ユークリッドの殺人学原論（ストイケイア）』（1985年）、『ホメロスの殺人方程式』（1987年）など、多くの作品が挙げられます。これらの作品は、彼の軽妙な筆致と独特の着眼点で、多くの読者を魅了し続けました。小峰元は、青春時代を鮮やかに描き出した、日本の推理小説史に名を残す重要な作家の一人と言えるでしょう。

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