小川守正

小川 守正

小川 守正（おがわ もりまさ、1922年1月23日 - 2019年3月2日）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の実業家であり、多岐にわたる著作を残した文筆家でもあります。激動の時代を生き抜き、産業界で要職を歴任する傍ら、教育分野や言論活動にも深く関わりました。

生涯

兵庫県に生まれた小川は、旧制甲南高等学校を卒業した後、1944年に九州帝国大学工学部航空学科で学びました。卒業後、航空機製造を手掛けていた川西航空機に入社しますが、太平洋戦争の終結に伴い会社は解散します。その後、小型三輪車を製造していた明和自動車へと活躍の場を移し、同社では労働組合の委員長を務めるなど、組織の運営や労務問題にも携わりました。

1955年、小川は松下電器産業（現在のパナソニック株式会社）に入社します。入社後は、当時まだ一般家庭には普及していなかった電子レンジ事業において責任者を務めるなど、黎明期の家電製品開発・普及に貢献しました。時代の変化とともに、住宅関連設備の重要性を認識し、1977年には松下電器から独立する形で分社化された松下住設機器の専務取締役に就任。さらに1982年には同社の代表取締役社長に昇り詰め、住宅関連分野における事業拡大を推進しました。経営者として確固たる地位を築いた後、1984年に松下グループを退職しました。

松下電器退職後も、小川の活動は留まることを知りませんでした。教育分野においては、母校である甲南学園の理事長として学園運営に尽力しました。また、近畿大学工学部では教授として教鞭をとり、後進の育成に力を注ぎました。他にも、古巣である松下電器産業の客員や、PHP研究所の参与として経営思想の研究・普及に携わり、さらには甲南病院の理事長を務めるなど、その活動は多岐にわたりました。

文筆活動

実業家としての豊富な経験と幅広い見識に基づき、小川は精力的に文筆活動も行いました。その著書は経営論、歴史観、人物伝など、多様なテーマに及びます。主な単著には、松下幸之助の経営哲学を自身の経験から解説した『実践経営学 松下幸之助に学んだ自主責任経営とは』や、戦略論の名著を独自の視点で読み解いた『勝利の哲学 クラウゼヴィツの戦略論』があります。また、創造的戦略の重要性を説いた『勝ち残る経営 創造的戦略が企業を活性化する』や、昭和初期の精神性を探求した『昭和前史に見る武士道 続平生釟三郎・伝』なども著しています。

共著においても、技術分野から人物伝まで幅広い執筆活動を行いました。深尾吉志と共同で『部品加工工業における製品検査』を著し、生産現場の課題に言及しました。また、教育者として知られる平生釟三郎に関する研究にも熱心で、上村多恵子との共著として『暗雲に蒼空を見る平生釟三郎』、『平生釟三郎・伝 世界に通用する紳士たれ』、『大地に夢求めて ブラジル移民と平生釟三郎の軌跡』などを発表しており、平生の生涯と思想、そして社会に与えた影響について深く掘り下げています。

このように、小川守正は、激動の時代を実業家として生き抜き、電子レンジ事業や住宅設備事業の発展に貢献しただけでなく、退職後も教育者、言論人として社会に貢献し続けた多才な人物でした。その著作は、現代にも通じる経営の知恵や、歴史から学ぶべき教訓に満ちています。

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