小川英雄

小川英雄（おがわ ひでお）は、1935年に神奈川県川崎市で生まれ、2016年11月29日に亡くなった日本の考古学者です。慶應義塾大学の名誉教授として、長年にわたり教育・研究活動に貢献しました。

生涯と研究

小川英雄は、1960年に慶應義塾大学文学部史学科を卒業後、同大学大学院に進学しました。大学院では、ローマ史研究者の近山金次教授の指導を受け、オリエント考古学を専門としました。特にローマ時代の密儀宗教に強い関心を持ち、その研究に力を注ぎました。研究のため、ロンドン大学やユトレヒト大学にも留学し、見識を深めました。1965年に慶應義塾大学大学院博士課程を中退後、慶應義塾大学文学部の助教授に就任。その後教授に昇格しました。

1965年からは、日本オリエント学会がイスラエルで実施したテル・ゼロール遺跡の発掘調査に3度参加しました。また、イギリスや日本国内でも発掘調査を行い、考古学研究の現場にも深く関わりました。1988年には、学位論文「イスラエル考古学研究」を慶應義塾大学に提出し、文学博士号を取得しました。2001年に慶應義塾大学を定年退任し、名誉教授となりました。

学界では、日本オリエント学会会長、三田史学会会長を務め、学術分野の発展にも貢献しました。2016年11月29日に永眠しました。

研究内容

小川英雄の研究は、古代オリエント、特にイスラエル考古学とローマ時代の宗教に焦点を当てています。密儀宗教という、現代の私たちには馴染みの薄い分野を深く掘り下げ、その歴史的背景や宗教的意義を明らかにしました。また、発掘調査を通じて得られた知見を基に、古代オリエントの文化や社会を多角的に分析しました。彼の研究は、古代世界の理解を深める上で重要な貢献を果たしています。

著作と翻訳

小川英雄は、数多くの著書や翻訳を通じて、研究成果を広く社会に共有しました。彼の著作は、古代オリエントの神話や宗教、歴史をわかりやすく解説しており、一般の読者にも理解しやすい内容となっています。また、海外の研究者の著作を翻訳することで、最新の研究動向を日本に紹介しました。

主な著書:
『オリエント神話99の謎 神々と宗教の起源を探る』（1978）
『聖書の歴史を掘る パレスチナ考古学入門』（1980）
『＜ビジュアル版＞世界の歴史2 古代のオリエント』（1984）
『古代オリエントの宗教』（1986）
『イスラエル考古学研究』（1989）
『ミトラス教研究』（1993）
『ローマ帝国の神々 光はオリエントより』（2003）
『古代オリエントの歴史』（2011）
『発掘された古代オリエント』（2011）

主な共編著:
『地中海アジアの古都』（1987）
『聖なる空間』（1993）
『オリエント世界の発展』（1997）

主な翻訳:
『ミトラス教』（1973）
『バル・コホバ 第二ユダヤ叛乱の伝説的英雄の発掘』（1979）
『ティグリス号探検記 文明の起源を求めて』（1981）
『文明のあけぼの』（1982）
『ギリシャ・ローマの遺産』（1982）
『カナン人とアモリ人』（1984）
『聖書考古学大事典』（1984）
『キュベレとアッティス その神話と祭儀』（1986）
『地中海都市の興亡 アンティオキア千年の歴史』（1986）
『聖婚 古代シュメールの信仰・神話・儀礼』（1989）
『ミトラの密儀』（1993）
『古代ローマの来世観』（1996）

これらの著作や翻訳を通じて、小川英雄は古代オリエントの世界を日本の読者に深く理解させ、考古学研究の発展に大きく貢献しました。

参考文献

「小川英雄先生を偲ぶ」『オリエント』60-1, 2017年, 97-99頁. doi
小川 英雄<研究者情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター

これらの資料は、彼の生涯と業績をより深く理解するための重要な情報源です。

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