小杉焼

小杉焼：富山から生まれた、緑釉の陶器

富山県射水市小杉地区で、約80年間にわたって受け継がれてきた小杉焼。その歴史と魅力を紐解いていきましょう。

80年の歴史：文化13年から明治30年

小杉焼の起源は1816年（文化13年）頃まで遡ります。初代高畑与右衛門によって始められたこの焼き物は、1897年（明治30年）頃まで、4代にわたって受け継がれ、京焼系相馬焼風の様式を特徴としました。

独特の釉薬：小杉青磁の魅力

小杉焼の最大の特徴は、なんといってもその釉薬です。銅青磁釉と飴釉による独特の色合いは、他の焼き物にはない魅力を放ちます。特に「小杉青磁」と呼ばれる緑釉は、淡い緑色の発色が美しく、織部釉とはまた異なる、独特の風合いを醸し出しています。

複数の窯跡：黒河二十石周辺

小杉焼の窯跡は、黒河二十石字箕輪、戸破、上野、茶屋町の4箇所で確認されています。中でも戸破窯は多くの生活雑器を生産していましたが、他産地からの陶器の流入増加により、1888年（明治21年）、四代目陶山三十郎によって生産が終了しました。

昭和期の復興と現代

昭和に入ると、小杉焼の復興運動が起こり、戦時経済統制会社の富山県陶磁器工業株式会社小杉分工場工芸部門として、片口窯や横堀窯などが操業しました。そして現在では、陶芸家池上栄一氏が「小杉焼栄一窯」として、伝統を守りながら制作活動を続けています。

小杉焼を支えた陶工たち

小杉焼の歴史を語る上で欠かせないのが、その陶工たちです。

初代 高畑与右衛門: 小杉町伊勢領出身といわれる高畑八郎兵衛の弟。福島県相馬で十数年修業した後、富山に戻り、太閤山近くの箕輪山に窯を築きました。藩から保護を受け、小杉焼の礎を築きました。
二代 高畑与右衛門:初代に劣らない名工として知られ、小杉焼の改良に尽力し、多くの後進を育成しました。
三代 陶山与右衛門: 若くして亡くなったため、小杉焼の歴史においては短い期間しか関わっていませんでした。
四代目 陶山三十郎: 二代目与右衛門の弟。小杉焼の再興を目指しましたが、瀬戸や有田などからの陶磁器の流入に抗えず、廃業せざるを得ませんでした。

終わりに

約80年の歴史を持つ小杉焼は、その独特の釉薬と、それを支えた陶工たちの情熱によって生み出されました。明治時代に一度は途絶えたものの、昭和期の復興運動を経て、現在も制作が続けられている小杉焼は、日本の陶器史において重要な位置を占める存在といえるでしょう。その美しい緑釉の輝きは、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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