小林の14球

小林の14球：1995年日本シリーズ伝説

1995年10月25日、明治神宮野球場で行われた日本シリーズ第4戦。オリックス・ブルーウェーブの小林宏投手とヤクルトスワローズのトーマス・オマリー内野手の対決は、「小林の14球」として、今も語り継がれる名勝負となりました。フジテレビ中継では瞬間視聴率55.9％を記録し、日本中が固唾をのんで見守りました。

背景：震災からの復興と悲願の達成

1995年、阪神・淡路大震災は神戸に壊滅的な被害をもたらしました。オリックスはユニフォームに「がんばろうKOBE」のワッペンを付け、復興のシンボルとして戦い、球団譲渡後初のパ・リーグ優勝を果たします。日本シリーズの相手は、2年前に日本一を経験しているヤクルトでした。

本拠地グリーンスタジアム神戸で開幕したシリーズ、オリックスは守護神平井の不調も重なり3連敗と追い込まれます。第4戦も1-0でヤクルトがリードし9回を迎えますが、オリックスは小川の同点ホームランで延長戦に持ち込みます。

延長10回から小林が5番手として登板。11回裏、一死から荒井が四球で出塁し(代走橋上)、続く土橋もヒットで続き、一死一、二塁のピンチを迎えます。ここで打席に立つのは、シーズン途中に阪神から移籍し、後にシリーズMVPを獲得するオマリーでした。ブルペンでは前日先発の星野が準備をしていましたが、仰木監督は小林の続投を決断。小林は前日の第3戦にも登板し、ミューレンに初球を打たれ降板していました。

内容：12分20秒の死闘

小林はオマリーに対し、2球続けてストライクを奪い、追い込みます。しかし、3球目が外れ1-2。その後、ファウルが8球も続き、その中にはサヨナラホームランかと思われる大飛球もありました。球場全体に緊張感が漂います。当時22時を過ぎており鳴り物応援は禁止されていたため、観客のどよめきだけが響き渡っていました。

2-3となり、小林が投じた14球目。オマリーがフルスイングするも空振り三振。勝負が決着しました。小林が1球目を投じてからオマリーが三振するまで、12分20秒。球場は興奮の坩堝と化しました。

その後：勝利と敗北、そして未来へ

小林は続く古田も打ち取り、11回裏を無失点で切り抜けます。12回表、オリックスはD・Jのホームランで勝ち越しに成功。小林は12回も続投し、ヤクルト打線を抑え、オリックスはシリーズ初勝利を挙げました。

しかし、翌日の第5戦、前日に小林を投入したオリックスは高橋を急遽先発させますが敗北。1勝4敗でシリーズを終えます。この年のシリーズMVPはオマリー、敢闘賞は小林が受賞しました。

小林の14球は、震災からの復興を目指す神戸の人々、そしてオリックスファンにとって、忘れられない記憶として刻まれています。それは、野球の持つドラマ性と、一瞬に込められた人々の想いが凝縮された、まさに伝説の名勝負でした。

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