小林日出夫

角日出夫氏（旧姓：小林日出夫）は、華麗なるラグビー人生と、手腕を発揮した経営者としての二つの顔を持つ稀有な人物です。1961年東京都文京区に生まれ、目黒高等学校（現：目黒学院高等学校）、明治大学と進学。在学中はラグビーに打ち込み、卓越した才能を発揮しました。

大学卒業後の1984年には新日本製鐵に入社、新日鉄釜石ラグビー部へ所属します。スタンドオフとして活躍し、チームの日本一に貢献。その活躍は日本代表への選出という栄誉にも繋がりました。1983年から1986年にかけて日本代表として国際舞台を経験し、同期の平尾誠二氏からは「状況判断力に優れた、視野の広いゲームメーカー」と評されるなど、高い評価を受けていました。しかし、練習中の怪我により惜しまれつつ現役を引退することになります。

その後、義父の勧めで1988年、新日本製鐵を退社。チタカ・インターナショナル・オブ・アメリカに入社し、アメリカでレストラン経営の経験を積みます。1990年に帰国後、チタカ・インターナショナル・フーズに入社。エリアマネージャーなどを経て1997年には副社長に就任。1998年には社長に昇任します。

しかし、就任した会社は経常赤字という厳しい状況にありました。角氏は、抜本的な改革に着手します。まず、従業員に平均9%の賃金カットを提案。しかし、これは単なるコスト削減策ではありませんでした。目標達成を条件に、カット分を全額返還し、目標超過分はさらに給与に反映するという画期的な提案でした。

さらに、角氏は従業員との徹底的なコミュニケーションを図ります。毎週1回、閉店後の夜11時から深夜2時頃までミーティングを120回以上開催。従業員の意見を聞き、現場の状況を把握することで、全員で会社を立て直していくという強い意志を示しました。その結果、1998年度は黒字転換、目標利益も達成するという見事な成果を収めます。

経営戦略においても、角氏は大胆な決断を下しました。それまで主力だったフランチャイズ加盟店を整理し、ケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナツ、ドトールコーヒーの3ブランドに絞り込みました。この集中戦略は、利益率の向上に大きく貢献します。加えて、なめらかプリンで知られるパステルの成長も追い風となり、社長就任時の128億円だった売上高は2006年度には216億円と、6割以上増加するという目覚ましい成長を遂げました。

ラグビー選手時代培ったリーダーシップ、状況判断力、そして何よりも人との繋がりを大切にする姿勢。これらの経験と人徳が、経営者としての角日出夫氏の成功を支えたと言えるでしょう。数々の困難を乗り越え、会社を再生に導いた彼の物語は、多くの経営者、そしてスポーツマンにとって、大きな示唆を与えてくれるものです。彼の功績は、単なる企業経営の成功にとどまらず、困難な状況でも諦めずに挑戦し続けることの大切さを教えてくれます。 彼の経験は、日本の企業経営史においても重要な一例として、これからも語り継がれていくでしょう。

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