小林節正

1961年生まれ、日本のファッションデザイナー。父親が靴デザイナーであった影響を受け、自身もその道に進む。独創的な視点と研究的なアプローチで知られ、ファッションのみならず様々な分野で活動を展開している。

キャリアの始まりは、父の仕事に触発された靴作りへの関心からだった。イタリアへと渡り、伝統的な靴職人のもとで専門的な技術を習得し、靴製作の基礎を築いた。帰国後、1980年から1985年にかけて、当時の著名なファッション誌『Zipper』のスタッフとして活動。ファッション業界の現場に身を置き、多様な経験を積んだ。

『Zipper』退職後の1985年からはフリーランスとして独立。特に靴製作の技術を活かし、タケオキクチといった国内の複数の人気ブランドのために靴のデザイン・製作を請け負った。この時期に培った経験と人脈が、後の自身のブランド設立へと繋がっていく。

1993年、自身の名を冠したファッションブランド『ジェネラルリサーチ（General research）』を立ち上げた。このブランドは、ミリタリー、ワーク、アウトドアといった要素を独自の解釈で取り入れたウェアを中心に展開し、その先進的で実験的なデザインアプローチがファッションシーンにおいて高い評価を獲得。多くのファッション誌で紹介され、小林節正というデザイナーの名を世間に広く知らしめるきっかけとなった。

ファッションブランドの運営と並行して、異分野での活動にも関心を示した。2002年には、かつて自身が運営していた衣服のショップ「WIN A COW FREE」の跡地を利用し、著述家の松浦弥太郎氏が営む書店『COW BOOKS』の開店を企画・実現した。これは、単なるアパレルデザイナーにとどまらない、多角的なキュレーション能力を示すエピソードとして知られている。

2007年以降、自身のブランド展開に変化が見られた。『ジェネラルリサーチ』という名称でのコレクション発表を一旦終了。以降は、『マウンテンリサーチ（Mountain research）』を主軸としつつ、『ナーヴァル・リサーチ（Naval research）』、『プリズナー・リサーチ（Prisoner research）』、『ウォーフィールド・ウェアー・リサーチ（War field wear research）』など、「……リサーチ」と冠する複数のコンセプトラインを継続的に展開している。これらのラインは、それぞれのテーマに基づいた研究的なアプローチでデザインされ、衣類を中心に、アクセサリーや雑貨など幅広いアイテムを展開している。このリサーチシリーズへの移行は、彼のデザイン活動が単なる服作りに留まらず、特定のテーマを深く掘り下げる探求的なプロセスへと発展したことを示唆している。

近年では、ファッション以外の分野にもその活動範囲を広げている。2021年には、山梨県道志村にあるキャンプ場「水源の森キャンプ・ランド」の総合ディレクションを担当。自然と共生するアウトドアフィールドのプロデュースを手がけるなど、デザイン活動を通じて多様なライフスタイル提案を行っている。

手がけた主なブランド/シリーズ

小林節正氏が手がけた主なブランドおよびシリーズは以下の通り。

ジェネラルリサーチ（General research）：1993年に開始された初期の代表的ファッションブランド。主にアパレル製品を中心に展開。
マウンテンリサーチ（Mountain research）：ジェネラルリサーチ休止後に主軸となったライン。アウトドア、ミリタリー要素を研究的に取り入れたウェアが特徴。
ナーヴァル・リサーチ（Naval research）：海軍や船舶にまつわる要素をテーマにしたシリーズ。主にアパレル製品。
プリズナー・リサーチ（Prisoner research）：囚人服など、特定のユニフォームやスタイルを研究したシリーズ。主にアパレル製品。
ウォーフィールド・ウェアー・リサーチ（War field wear research）：戦場や軍事的なテーマを研究したシリーズ。主にアパレル製品。
ホースブランケット・リサーチ（Horse Blanket research）：馬用の毛布などから着想を得たテキスタイル製品のライン。ストールやマフラーなどが中心。
アナルコ・パックス（anarcho pax）：衣類以外の日用品や生活雑貨を手がけるライン。
SEtt：靴を専門とするライン。自身のルーツである靴製作への回帰とも言える。

これらの活動を通じ、小林節正は日本のファッション界において、常に新しい視点を提示し続ける影響力のあるデザイナーの一人として独自の地位を確立している。

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