小池正胤

小池正胤(1930-2014)氏は、日本の近世文学、特に近世後期に流行した草双紙や黄表紙を専門とする研究者として、日本における江戸文化研究に大きな足跡を残しました。東京都新宿区に生まれ、東京学芸大学国語科を卒業後、同大学大学院博士課程単位取得退学という経歴を持ちます。

その後、豊田工業高等専門学校や東京学芸大学、金沢大学などで教鞭をとり、1972年には東京学芸大学助教授、そして教授に昇進しました。東京学芸大学においては、草分け的存在として多くの学生を育成し、日本の国文学研究の発展に貢献しました。1994年には東京学芸大学を定年退官し名誉教授となりましたが、その後も富士フェニックス短期大学教授として教育に携わりました。

小池氏の研究活動は多岐に渡り、特に草双紙研究においては、独自の会「叢の会」を設立し、精力的に研究を進めました。この「叢の会」は、草双紙研究を深める上で重要な役割を果たし、多くの研究者や学生にとって貴重な存在となりました。同会が編纂・校訂に関わった『江戸の戯作絵本』『江戸の絵本 初期草双紙集成』『黒本・青本の研究と用語索引』などは、草双紙研究において必須の参考文献となっています。

また、小池氏は単著として『反骨者大田南畝と山東京伝』を執筆するなど、江戸時代の庶民文化、特に戯作や絵本の研究に貢献しました。この著作は、大田南畝と山東京伝という、江戸時代を代表する二つの文筆家の業績を詳細に分析し、彼らの作品を通して江戸時代の社会状況や文化風土を深く考察した内容となっています。

さらに、小池氏は多くの編纂・校訂にも携わっています。『江戸の戯作絵本』全4巻、続全2巻、『江戸の絵本 初期草双紙集成』全4巻、『黒本・青本の研究と用語索引』など、いずれも草双紙研究において重要な文献であり、後世の研究者にとって貴重な資料となっています。これらの業績は、小池氏が草双紙研究に情熱を注ぎ、その分野の発展に大きく貢献したことを示しています。

これらの活動を通して小池氏は、江戸時代の庶民文化、特に草双紙や黄表紙といった分野に光を当て、それらが持つ豊かな表現力や社会史的意義を明らかにしました。彼の研究は、単なる文献の解読にとどまらず、江戸時代の社会構造や人々の生活、思想などを深く理解する上で重要な手がかりを提供しています。

小池正胤氏の研究は、現代の私たちが江戸時代の文化を理解し、その魅力を再発見する上で大きな役割を果たしており、その功績は長く記憶されるべきでしょう。彼の残した膨大な研究成果は、今後も多くの研究者や学生によって引き継がれ、発展していくことでしょう。彼の研究は、単なる学問にとどまらず、日本の文化遺産の保存と継承に大きく貢献したと言えるでしょう。そして、小池正胤という一人の研究者の生涯は、日本の文学研究史に燦然と輝く一ページを刻み込んだと言えるのではないでしょうか。

もう一度検索