小泉勲

小泉 勲（こいずみ いさお）

日本のバレーボール界において、その卓越した技術と情熱で一時代を築いた元選手、それが小泉 勲氏です。1945年7月2日に生を受けた氏は、選手としてだけでなく、引退後も競技の発展に多大な貢献を続けています。

小泉氏のバレーボールキャリアは、中央大学でその基礎を築くことから始まりました。大学卒業後、当時の日本のトップレベルリーグであった日本リーグで活躍する道を歩みます。所属したのは、日本鋼管（NKK）のバレーボール部、通称NKKナイツでした。NKKナイツは日本リーグ創設期からの強豪として知られ、小泉氏はそのチームの中心選手として、多くの試合で勝利に貢献しました。当時の日本リーグは、企業の威信をかけた熱戦が繰り広げられる舞台であり、その中でスター選手の一人として注目を集めました。

選手時代の小泉氏の特筆すべき点は、その多才なプレースタイルにありました。ポジションは、チームの司令塔であるセッターと、得点を挙げるアタッカーを兼任するという、非常にユニークなものでした。セッターとしては、正確で多彩なトスワークで攻撃を組み立て、アタッカーとしては、力強いスパイクで相手コートにボールを突き刺しました。この「二刀流」ともいえる能力は、チームの戦術に深みを与え、相手チームにとっては予測困難なプレーを生み出す源となりました。現代バレーボールでは専門化が進んでいますが、小泉氏のような兼任プレーヤーは、その高い技術と状況判断能力を示すものでした。

彼の選手キャリアにおける最も輝かしい功績は、1968年に開催されたメキシコシティオリンピックでの活躍でしょう。小泉氏は、この大会にバレーボール男子日本代表の一員として選出されました。当時の日本代表は、世界の強豪国とも互角以上に渡り合う実力を有しており、メダル獲得への期待が寄せられていました。チームは順調に勝ち進み、決勝でソビエト連邦と対戦。激しい戦いの末、惜しくも金メダルには届きませんでしたが、見事な銀メダルを獲得しました。この歴史的な偉業達成において、小泉氏は選手として重要な役割を果たしました。メキシコオリンピックでの銀メダル獲得は、日本男子バレーボールが世界にその名を轟かせた瞬間であり、その後の国内でのバレーボール人気向上にも大きく貢献しました。

オリンピックでの栄光を経て、小泉氏はその後も選手として国内外の舞台で活躍を続けました。長年にわたるトップレベルでのプレー経験は、彼自身のバレーボール観を深め、将来指導者としても活動する上での貴重な財産となりました。

現役を引退した後は、バレーボール界への貢献を多角的に続けています。特に、NPO法人日本バレーボール・オリンピアンの会において、理事長という要職を務めています。この団体は、オリンピックに出場経験のあるバレーボール選手たちが集まり、その経験や知識を社会に還元することを目的として活動しています。小泉氏は理事長として、若い世代の育成支援、バレーボールを通じた地域貢献、オリンピックムーブメントの推進など、幅広い活動を牽引しています。オリンピックメダリストとしての経験を生かし、後進の指導やバレーボールの普及振興に精力的に取り組んでいます。

また、バレーボールに関する専門的な知見をまとめた著書も出版しています。1980年に梧桐書院から刊行された『バレーボール入門 基本から実戦まで』は、バレーボールの基礎から応用までを網羅した一冊であり、多くのバレーボールプレーヤーや指導者にとって参考となる書籍です。自身の豊富な経験に基づいた実践的なアドバイスが盛り込まれており、長年にわたり読み継がれています。

小泉 勲氏の生涯は、選手として世界の頂点に迫る活躍を見せた時代、そして引退後も競技の発展のために尽力する現在の活動に至るまで、バレーボールと共に歩んできた軌跡と言えます。その功績は日本のバレーボール史において重要な一ページを飾るものであり、今後も語り継がれていくことでしょう。

関連事項として挙げられるNKKナイツは、パナソニック・パンサーズの前身の一つにあたるチームであり、小泉氏が現役時代に所属し活躍した歴史的なチームです。

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