小田急箱根入生田検車区

入生田検車区

概要

入生田検車区（いりうだけんしゃく）は、神奈川県小田原市入生田に設けられた、小田急箱根が運営する鉄道車両の保守・管理施設です。一般的には「入生田車両基地」や「入生田車庫」といった名称でも知られています。

この検車区は、箱根登山鉄道線の主要駅である入生田駅から、風祭駅方面へおよそ200メートルほど離れた場所に位置しています。箱根湯本駅や小田原駅方面からアクセスが可能であり、主に箱根登山電車として運用される車両群の日常的な収容、点検、そして安全運行に不可欠な検査や整備といった業務を行う拠点として機能しています。

収容車両

当検車区には、小田急箱根の鉄道線に所属する車両が収容されています。ここに留置される車両は多岐にわたり、箱根登山鉄道線の歴史を彩ってきた個性豊かな形式が揃っています。

具体的には、開業当初からの歴史を持つモハ1形やモハ2形といった吊り掛け駆動の古典的な車両から、その後の近代化を担った1000形「ベルニナ号」、2000形「サン・モリッツ号」、そして箱根の急勾配に対応するために開発された最新鋭の連接車両である3000形・3100形「アレグラ号」まで、幅広い世代の車両が収容されています。

また、線路や電気設備の保守作業に用いられる事業用車両、モニ1形もここに配置されています。これらの車両は、定期的な検査や必要に応じた整備を受けるため、入生田検車区がその活動の拠点となります。

なお、小田急電鉄株式会社が所有する通勤車両などが、日常的にこの検車区に留置されることはありません。あくまで小田急箱根の自社車両のための施設となっています。

特徴的な軌道設備：三線軌条

入生田検車区に関連する設備の一つとして、独特な軌道構造が挙げられます。それは「三線軌条（さんせんきじょう）」と呼ばれるもので、異なる二つの軌間（レールの幅）に対応するために、レールが三本敷設されている区間を指します。

かつて箱根登山鉄道線は、小田原駅から箱根湯本駅、そして強羅駅まで、狭軌（1067mm）と標準軌（1435mm）の二種類の軌間を持つ車両が運行されていました。このため、両方の軌間に対応するために多くの区間で三線軌条が採用されていました。

しかし、2006年3月に小田急箱根の自社車両による小田原駅への定期的な乗り入れが廃止された際、小田原駅から入生田駅の1番線に至る区間に敷設されていた標準軌用のレールは撤去されました。

それでも、現在においても箱根湯本駅から当検車区の2番線を経由して車両基地内へ連絡する区間には、狭軌と標準軌に対応するための三線軌条が一部残されています。この残された三線軌条区間は、主に箱根湯本駅と検車区の間で車両の回送を行う際に使用されています。この設備は、箱根登山鉄道線の過去の運行形態を今に伝える貴重な名残と言えるでしょう。

入生田検車区は、これらの多種多様な車両を適切に管理し、箱根の山岳地帯を走行する特殊な環境下での安全運行を車両面から支える、小田急箱根にとって極めて重要な基盤施設です。

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