小笠原直樹

小笠原直樹氏は、1951年7月18日、秋田県横手市に生を受け、2021年3月3日に70歳でその生涯を閉じた。ジャーナリスト、そして実業家として、特に秋田魁新報社の経営を長く担い、同時に秋田県内外の様々な分野で指導的な役割を果たした人物である。

横手高等学校を卒業後、中央大学で学び、1975年（昭和50年）に秋田市に本社を置く秋田魁新報社へと入社。ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせた。記者として現場を経験した後、社会部長や論説副委員長といった要職を歴任し、編集部門の中心人物として活躍。その手腕を買われ、2003年には取締役編集局長、2007年には常務取締役編集局長に昇進した。編集部門の責任者として、報道の質を高め、地域ジャーナリズムの発展に貢献した。

2009年（平成21年）には、同社の代表取締役社長に就任。以来、2019年（平成31年/令和元年）までの十年間にわたり、経営のトップとして新聞社の運営を指揮した。この間、デジタル化の進展やメディア環境の変化といった難題に対し、経営者としての手腕を発揮し、地域に根差した情報発信の重要性を追求した。社長退任後も、同社の相談役として経営に助言を与えるなど、その経験と知識は組織にとって貴重であった。

小笠原氏の活動は、秋田魁新報社の枠にとどまらなかった。2014年から2020年まで、秋田経済同友会の代表幹事を務め、秋田県の地域経済活性化に向けた提言や活動を主導した。また、社会貢献活動にも積極的であり、2010年から2015年にかけて秋田県交通安全協会の会長を務め、県内の交通安全意識向上に努めた。文化振興の分野では、2009年から2019年まで秋田県書道連盟の会長として、県内の書道文化の発展に寄与。さらに、2010年からは秋田県レクリエーション協会の会長を、2015年以降は秋田県体育協会（後に秋田県スポーツ協会に改称）の会長を務めるなど、県民の健康増進やスポーツ・レクリエーション活動の振興にも多大な貢献をした。これらの役職を通じて、小笠原氏は地域社会の多様なニーズに応え、その発展のために献身的に活動した。ジャーナリストとしての視点、実業家としての経営手腕に加え、これらの幅広い活動は、彼が単なる新聞社の経営者ではなく、地域社会全体のリーダーであったことを示している。

また、全国的な活動としては、2014年から2019年まで共同通信社の理事会副会長を務め、地方紙の立場から日本の報道機関全体の連携強化や報道倫理の向上にも関与した。

晩年は病と闘った。2021年3月3日、外耳道がんのため、秋田市内の病院で逝去。70歳であった。死去時、秋田魁新報社の相談役を務めており、最後まで地域を見守り続けた。

小笠原直樹氏は、秋田魁新報社の社長として地域ジャーナリズムを牽引しただけでなく、経済、交通安全、文化、スポーツなど、多岐にわたる分野で指導力を発揮し、秋田県の発展に大きな足跡を残した人物として記憶される。その生涯は、地域への深い愛情と、社会貢献への強い意志に貫かれていた。

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