小荷駄

小荷駄（こにだ）とは

小荷駄は、戦国時代から近世にかけて日本において、兵粮や弾薬、陣地設営のための資材を輸送するための部隊を指します。この部隊は、駄馬や人夫（陣夫）から構成され、これらの人々が荷物を運ぶ役割を担いました。また、これらの部隊は「小荷駄隊」とも呼ばれ、現代の輜重隊に相当する存在です。

小荷駄の運用

小荷駄隊は主に小荷駄奉行によって指揮され、約50名から100名の足軽などによって護衛される形で運行されました。彼らは兵粮や必要な資材を直接運んだため、任務が非常に重要でした。特に、前進時は軍勢の後方に、退却時には先方に配置され、常に軍団の支えとなっていました。

中世以前、兵士たちは兵粮を自己で携帯するのが原則でしたが、長期の軍事行動においては携帯可能な量に限界があり、そのため数日分の兵粮を携帯し、残りは小荷駄に託すという形になりました。この小荷駄は、守護や戦国大名によって徴発され、軍の活動を円滑に進める役割を果たしていました。しかし、実際には小荷駄奉行の裁量により、様々な運用が行われていました。

徴発制度の変遷

近世においては、小荷駄の徴発は領民の義務とされ、村ごとに石高に応じて駄馬や人夫が徴発されるようになりました。この仕組みにより、兵士たちは軍事行動における兵粮の携帯から免れることができ、戦闘に集中できるようになりました。

近代の事例としては、秩父事件の際に、正式な軍隊とは異なるが、近代的な軍制を持つ一揆側が「小荷駄方」という部隊を編成した例も見られます。

輸送力の実態

江戸時代の具体例において、前橋藩酒井氏の軍役規定では、小荷駄隊は573頭の駄馬と1,179人の人夫で構成されていました。この組織で、3,686人の戦闘員と騎馬武者用の347頭の馬に対する補給を行うことになっています。駄馬1頭の積載量は約25貫目（94 kg）、人夫の場合は4貫目（15 kg）であり、小荷駄隊の総輸送力は71,547 kgに達します。

一方で、兵士や馬の1日の食料消費量を考えると、馬は大豆と糠で合計約5.8 kg、人間は約1 kgで、合計すると食料消費量は10,774 kgとなります。これを基に、小荷駄隊の輸送力をすべて食料に充てた場合、いかに多くても6.6日分の食料しか取り扱えないという結果が出ます。このように、実際の軍事行動の中でいかに効率的に物資を運ぶかが、大きな課題だったことがわかります。

結論

小荷駄の存在は、日本の軍事歴史において非常に重要な役割を果たしました。兵士たちが戦闘に集中できる環境を整えるため、大量の物資を効率的に運ぶ手段が求められていたのです。後世にその考え方や運用が引き継がれ、現代の物流や兵站システムに通じる考えは、この小荷駄から発展したとも言えるでしょう。

もう一度検索