小谷汪之

小谷汪之（こたに ひろゆき）は、1942年2月14日に埼玉県で生まれた日本の歴史学者であり、インド史を専門としています。東京都立大学の名誉教授であり、その研究は多岐にわたります。

学歴と職歴

1966年に東京大学文学部東洋史学科を卒業後、同大学院博士課程を中退しました。その後、東京都立大学人文学部の助手、千葉大学人文学部（後に文学部）の助教授を経て、東京都立大学人文学部の教授に就任しました。1999年から2002年まで歴史学研究会の委員長を務め、2002年には「歴史的転換期の西部インド」で東京都立大学から博士（史学）の学位を取得しました。2005年に定年退職し、その後は日本学術会議の会員としても活動しています。

研究内容

小谷汪之の研究は、インドの歴史と社会構造を深く掘り下げたものです。特に、マルクス主義の視点を取り入れ、アジア的生産様式論争や共同体の歴史、カースト制度や不可触民問題など、インド社会の根深い問題に焦点を当てています。また、近代インドにおける抵抗運動や社会変革、植民地主義の影響など、多角的な視点からインド社会の変遷を分析しています。

著書

小谷汪之は、数多くの著書を通じて、その研究成果を発表しています。代表的な著書には、『マルクスとアジア アジア的生産様式論争批判』（1979年）、『共同体と近代』（1982年）、『歴史の方法について』（1985年）、『大地の子 インドの近代における抵抗と背理』（1986年）、『インドの中世社会 村・カースト・領主』（1989年）、『歴史と人間について 藤村と近代日本』（1991年）、『ラーム神話と牝牛 ヒンドゥー復古主義とイスラム』（1993年）、『不可触民とカースト制度の歴史』（1996年）、『穢れと規範 賤民差別の歴史的文脈』（1999年）、『罪の文化 インド史の底流』（2005年）、『インド社会・文化史論―「伝統」社会から植民地的近代へ』（2010年）、『「大東亜戦争」期 出版異聞 『印度資源論』の謎を追って』（2013年）、『中島敦の朝鮮と南洋 二つの植民地体験』（2019年）などがあります。

これらの著書は、インドの歴史、社会、文化に関する深い洞察を提供し、インド史研究における重要な貢献となっています。

共編著と翻訳

小谷汪之は、単著だけでなく、共編著や翻訳にも積極的に取り組んでいます。共編著には、『現代歴史学入門』（1987年）、『西欧近代との出会い』（1994年）、『インドの不可触民 その歴史と現在』（1997年）、『社会・文化・ジェンダー 現代南アジア』（2003年）、『歴史における知の伝統と継承』（2005年）、『南アジア史 2(中世・近世)』（2007年）、『座談会　世界史の中の安倍政権』（2015年）などがあります。

翻訳には、『ヒンドゥー社会と女性解放 ヤムナーの旅・高位カーストのヒンドゥー婦人』（1996年）、『インド』（2001年）などがあり、海外の研究成果を日本に紹介することにも貢献しています。

小谷汪之の研究は、インド史の理解を深めるだけでなく、歴史学における理論的な考察にも貢献しています。その著作は、インド社会の複雑な構造と歴史的な変化を理解するための貴重な資料となっています。

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