小野健吉

小野健吉（おの けんきち）氏は、1955年に生まれた日本の著名な庭園学者です。特に日本庭園史を専門分野としており、長年にわたりこの分野の研究活動に深く携わっています。現在（2021年4月以降）は、大阪観光大学観光学部の教授を務めています。

和歌山県の出身で、学問の道を志し、1978年に京都大学農学部林学科を卒業しました。卒業後、キャリアの初期は東京都建設局で主事として勤務しました。その後、古都・京都に移り、1982年からは京都市文化観光局において文化財保護技師として、貴重な庭園を含む文化財の保存・保護に関わる業務に携わりました。

1987年には日本の文化財研究の中核機関である奈良国立文化財研究所の研究員となり、庭園史の研究者としてのキャリアを本格的にスタートさせました。研究所内での貢献が認められ、1992年には主任研究官に昇進しました。この研究活動の一環として、1998年には「京都を中心にした近代日本庭園の研究」というテーマで京都大学から農学博士号を取得し、研究者としての専門性をさらに深めました。奈良文化財研究所では、その後も中心的な役割を担い続け、2001年には主任研究官、2009年には文化遺産部長、そして2013年には組織運営の重要な役割を担う副所長を歴任するなど、要職を歴任しました。

研究機関での活動と並行して、国の文化財行政にも関与しました。2004年には文化庁において主任文化財調査官として勤務し、専門的な立場から文化財の調査や保護に関する政策・事業に貢献しました。

大学での教育活動にも積極的に取り組みました。2003年からは京都大学大学院人間・環境学研究科の客員助教授として、次世代の研究者育成に尽力し、2009年には客員教授に昇格しました。国立文化財研究所副所長を退任後、2016年4月からは和歌山大学観光学部の教授として、観光学と関連付けながら庭園史の研究・教育を進めました。2021年3月に和歌山大学を退官した後は、同年4月より現在の所属である大阪観光大学観光学部の教授に就任し、引き続き庭園史の研究と教育に従事しています。

小野氏の長年にわたる研究活動の成果は、数多くの重要な著作として発表されています。代表的なものとしては、以下のような書籍が挙げられます。

『岩波日本庭園辞典』（岩波書店、2004年）
『日本庭園 空間の美の歴史』（岩波新書、2009年）
* 『日本庭園の歴史と文化』（吉川弘文館、2015年）

これらの著作は、日本庭園史を学ぶ上で重要な文献として広く活用されています。また、これらの単著に加え、専門分野における多数の学術論文を発表しており、それらの研究成果はCiNiiなどの学術情報データベースを通じて広く公開され、研究者や一般の人々が閲覧できるようになっています。

小野健吉氏は、多岐にわたる経歴を通じて、研究者、教育者、そして文化財行政官という様々な視点から日本庭園史の研究とその保護・普及に多大な貢献をしてきました。現代日本における庭園研究の分野で、第一人者の一人として高く評価されています。

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