少女は卒業しない

『少女は卒業しない』（しょうじょはそつぎょうしない）は、人気作家・朝井リョウが手掛けた連作短編小説です。この作品は、2012年3月5日に集英社から単行本として出版され、その後2015年2月20日には集英社文庫からも刊行されました。

概要

物語の舞台となるのは、翌日には別の高校との合併に伴い、長年親しまれた校舎が取り壊されてしまうことになっている、ある地方の高校です。作品は、この学び舎にとって最後となる卒業式を迎える特別な一日を、それぞれの個性や背景を持つ7人の女子高校生の視点を通して多角的に描きます。高校生活最後の瞬間に立ち会う生徒たちが、自身の未来、人間関係、過去の出来事、そして変わりゆく環境に対する複雑な思いと向き合う姿が、繊細な筆致で綴られています。一つの「卒業式の日」という時間を複数の視点から描くことで、各キャラクターの秘められた感情や、同じ出来事に対する異なる感じ方が浮き彫りになり、読者は登場人物たちの内面に深く触れることができます。これは単に卒業という通過儀礼を描くのではなく、青春の終わりと新たな始まり、そして変化を受け入れながら一歩を踏み出す若者たちの葛藤と成長の物語と言えるでしょう。

主な登場人物

本作には、個性豊かな高校生たちが多数登場します。その中でも特に物語の中心となる、あるいは印象的なキャラクターの一部を紹介します。

• - 作田: 図書室の常連で、借りた本の返却期限をしばしば過ぎてしまう高校三年生。卒業後は京都にある私立の女子大学への進学を予定しています。
• - 孝子: ピアノ、英会話、吹奏楽部、生徒会と、様々な活動を精力的にこなす多忙な高校三年生。将来は地元の国立大学教育学部で学び、英語の教師になることを目指しています。
• - まなみ: 料理部の部長を務める高校三年生。卒業後は栄養士の専門学校に進むことが決まっています。校舎が取り壊される前夜に、ある目的のために学校に忍び込むという大胆な行動に出ます。
• - 岡田亜弓: 高校二年生でありながら、卒業式で在校生代表として送辞を読むという重要な役割を担います。バスケ部と生徒会書記を兼任しています。
• - 田所: 生徒会長を務める高校三年生。学業成績が優秀で、特に数学と世界史が得意です。
• - 後藤: 女子バスケ部の部長。男子バスケ部の寺田賢介と交際しています。
• - 高原あすか: 高校一年生の秋にカナダから転校してきた帰国子女の高校三年生。美術部に所属しています。

その他にも、孝子の幼馴染で既に高校を辞めている尚輝や、後藤の交際相手である寺田賢介といった人物が登場し、物語にそれぞれの色を添えています。

映画化

『少女は卒業しない』は、2023年2月23日に実写映画として公開されました。監督と脚本は中川駿氏が手掛けました。主演は、小説に登場するまなみ役を演じた河合優実氏です。

映画版では、小説で描かれた取り壊し間近の高校の雰囲気や、卒業を控えた生徒たちのリアルな心情が映像として表現されました。河合優実氏を中心に、小野莉奈氏（後藤由貴役）、小宮山莉渚氏（神田杏子役）、中井友望氏（作田詩織役）、窪塚愛流氏（佐藤駿役）、宇佐卓真氏（寺田賢介役）、瀧七海氏（岡田亜弓役）など、多くの若手俳優陣が出演し、キャラクターたちのドラマを紡ぎました。スタッフには、原作の朝井リョウ氏をはじめ、音楽担当の佐藤望氏など、様々な分野のクリエイターが集結し、この卒業の物語をスクリーン上に創り上げました。主題歌には、シンガーソングライターのみゆなが手掛ける「夢でも」が使用されています。

この作品は、物理的な場所としての学校がなくなる喪失感と、未来への希望や不安が入り混じる青春期の複雑な心情を描き出しており、小説、そして映画を通して、多くの読者や観客が自身の学生時代の経験や「卒業」という節目に思いを馳せることができるでしょう。

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