少年オルフェ

少年オルフェ

『少年オルフェ』は、米沢幸夫による児童文学作品であり、1962年に第3回講談社児童文学新人賞を受賞しました。ギリシア神話のオルペウス伝説をモチーフにした、兄妹の愛と冒険の物語です。

あらすじ

小学五年生の堀田すすむと、妹のふう子はとても仲の良い兄妹でした。しかし、ある日ふう子が風邪をこじらせて突然亡くなってしまいます。妹の死に打ちひしがれるすすむは、原っぱで途方に暮れていました。すると、彼の前に一台のロケットが現れます。

「妹に会いたい」というすすむの願いが神様に届いたのでしょうか。そのロケットは、黄泉の国へ向かう天の取り船でした。黄泉の国へ行けば、ふう子を生き返らせることができるかもしれない。そう信じたすすむは、たった一人でロケットに乗り込み、長い冒険の旅に出ることを決意します。

作品の特徴

本作は、ギリシア神話のオルペウス伝説に登場する主人公の二人を幼い兄妹に置き換えた物語です。しかし、子供向けの作品であるため、物語の主題は妹の死という悲劇よりも、主人公すすむの冒険に重点が置かれています。

物語にはSF的な要素がふんだんに盛り込まれており、ロケットで宇宙を旅したり、黄泉の国が惑星として描かれたり、すすむに協力する科学者が登場したりします。

登場人物

物語には、根っからの悪役は登場しません。

堀田すすむ:
この物語の主人公で、オルフェウスに相当する少年。妹のふじ子を生き返らせるために宇宙へ旅立ちます。優しく勇敢な性格で、妹のためなら死をも恐れません。小学5年生。
堀田ふじ子:
すすむの妹で、エウリュディケーに相当する少女。物語の冒頭で肺炎により亡くなります。死後、地球での記憶を失い、宇宙のフラワー星で暮らしています。小学1年生。
裁判長:
さばき星の裁判長。地球で死んだ者をロケットで連れてこさせ、フラワー星かアイス星のどちらへ送るかを決定します。閻魔大王のような存在です。
プッチー大統領:
フラワー星の大統領。すすむがふじ子を探すのを手助けします。
ミッシェル:
フラワー星の住人。フラワー星におけるふじ子の養母です。
ポポ先生:
フラワー星の科学者。ふじ子の記憶を取り戻す方法をすすむに教えます。
ユートピア博士:
フラワー星の科学者。天才肌ですが、少し変わったところがあります。空飛ぶ円盤を提供し、すすむの冒険に同行します。
マッシモ町長:
ユートピア博士と瓜二つの男性。サボテン星の町長です。顔が似ていることから、ユートピア博士と意気投合します。
* ダイヤナ女王:
サボテン星の女王。無断入国したすすむとユートピア博士を、闘技場でライオンと戦わせます。しかし、負傷しながらもライオンを退治したすすむの姿に心を打たれて改心し、ふじ子の薬を与えます。

出版状況

1962年に講談社から刊行されて以来、1969年、1981年、1988年と、複数回にわたり復刊されています。

テレビドラマ化

1965年にNHKが『小さなオルフェ』と改題して単発ドラマ化、1972年にはNHK少年ドラマシリーズでテレビドラマ化されました。

1972年版は、ストーリーや人物設定が大幅にアレンジされています。残念ながら、現存する映像は一部のみとなっています。

『少年オルフェ』は、兄妹の絆、勇気、そして希望を描いた、時代を超えて愛される児童文学作品です。

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