尹健次

尹健次（ユン・コォンチャ）氏は、1944年生まれの在日朝鮮人二世の政治学者・思想史家であり、神奈川大学の名誉教授です。近代日朝関係史、特に思想史を専門としています。

京都府出身の尹氏は、京都大学を卒業後、東京大学大学院に進み、博士課程を修了しました。1981年には「朝鮮近代教育の思想と構造」という研究で教育学博士の学位を取得しています。2015年3月まで神奈川大学外国語学部で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

また、在日総合誌『抗路』の編集者としても活動しました。これは在日朝鮮人の視点から社会や文化を考察する重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

尹氏の研究は、近代日本と朝鮮半島の関係、在日朝鮮人のアイデンティティ、そして民族問題など多岐に渡ります。特に、在日朝鮮人の歴史や意識、そして日本社会との関わりについて深く掘り下げ、多数の著作を発表しています。これらの著作は、日本の思想界に大きな影響を与え、在日問題や多文化共生を考える上で重要な資料となっています。

主な著書としては、『朝鮮近代教育の思想と運動』（1982年）、『異質との共存 戦後日本の教育・思想・民族論』（1987年）、『孤絶の歴史意識 日本国家と日本人』（1990年）、『きみたちと朝鮮』（1991年）、『「在日」を生きるとは』（1992年）、『民族幻想の蹉跌 日本人の自己像』（1994年）、『日本国民論 近代日本のアイデンティティ』（1997年）、『現代韓国の思想 一九八〇-一九九〇年代』（2000年）、『もっと知ろう朝鮮』（2001年）、『ソウルで考えたこと 韓国の現代思想をめぐって』（2003年）、『思想体験の交錯 日本・韓国・在日1945年以後』（2008年）などがあります。

また、『冬の森』という詩集も発表しており、研究者としての活動だけでなく、詩人としての側面も持っています。

2015年には、在日朝鮮人の精神史を三部作としてまとめた『「在日」の精神史1 渡日・解放・分断の記憶』、『「在日」の精神史2 三つの国家のはざまで』、『「在日」の精神史3 アイデンティティの揺らぎ』を刊行し、長年の研究成果を世に問いました。さらに2023年には『生と死 ある「在日」の断想』を発表し、自身の経験を踏まえた考察を展開しています。

共編著としては、『戦後日本 占領と戦後改革 全6巻』（1995年）があり、戦後日本の歴史と社会に関する研究にも貢献しています。

尹健次氏の研究は、単に歴史を振り返るだけでなく、現代社会における民族、文化、アイデンティティの問題を深く考えるための重要な視点を提供しています。その思想と研究は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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