尾市1号墳

尾市1号墳の詳細

尾市1号墳は、広島県福山市新市町にある古墳であり、その形状は八角形とされています。この古墳は、尾市古墳群に含まれており、古代の葬送文化や地域の歴史を示す貴重な遺跡です。

位置と構造

尾市1号墳は、広島県東部の芦田川支流である神谷川に注ぐ芦浦川を遡った、芦浦谷の最も奥まった場所の丘陵の先端に築かれています。1984年及び2002年から2007年にかけて計画的な発掘調査が実施されました。

古墳の直径は約10.5メートル、高さは1.95メートルほどであり、外周には外護列石と呼ばれる石列が設置されています。埋葬施設には横口式石槨が使用されており、南西方に開口しています。この横口式石槨は、珍しい十字形を呈する構造を有し、全国的に見ても例を見ない独自のデザインです。

埋葬施設の特徴

埋葬施設の石槨は、いくつかの石室が配置されています。全長は主軸で6.68メートルあり、中央の槨は長さ1.61メートルから1.68メートルで、奥壁の幅は1.16メートルです。さらに、西槨と東槨もそれぞれ異なるサイズで配置されています。

この石槨は、石材が精巧に組み合わされており、漆喰で丁寧に仕上げられています。特に、接合部には慎重な加工が施され、石材の強度が確保されています。石槨内では、扉石が存在したと考えられ、羨道部は礼拝石と呼ばれる敷石に囲まれています。

文化的・歴史的意義

尾市1号墳の築造時期は7世紀後半、古墳時代の終末期と考えられています。この時期、横口式石槨の古墳は主に畿内に見られますが、備後地方の古墳群においても類似の構造が見受けられる点が注目されます。このことは、尾市1号墳が畿内・ヤマト王権との関係を持っていることを示唆しており、地域の歴史的背景についての重要な証拠です。

また、埋葬形態が一般的な単葬を超えて3人の合葬を目的にしている点でも特異性を示しています。これは、当時の社会的な変化や家族構造を反映している可能性があります。

発掘調査の経緯

1984年には、新市町教育委員会による保存対策としての発掘調査が行われ、その結果は1985年に概報として発表されました。さらに、2002年から2007年にかけても福山市教育委員会によって詳細な調査が実施され、その成果は2008年に報告書としてまとめられました。

まとめ

尾市1号墳は、そのユニークな構造と埋葬形式から、古代の文明や文化を理解するうえで重要な遺跡です。福山市しんいち歴史民俗博物館では、この遺跡の模型が展示されており、地域の歴史を学ぶ貴重な機会が提供されています。古墳の研究を通じて、当時の人々の生活や思想をより深く理解するための手助けとなることでしょう。

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