尾津喜之助

尾津喜之助の生涯と影響力

尾津 喜之助（おづ きのすけ、1897年1月28日 - 1977年6月28日）は、日本の昭和期に著名な露天商であり、関東尾津組の組長としても知られています。彼の人生にはさまざまなエピソードがあり、その影響力は昭和の街や人々に多大なものをもたらしました。

幼少期と教育の挫折

東京府本所相生町（現在の墨田区）で鍛冶職人の子に生まれた尾津喜之助は、若いうちから厳しい環境に置かれます。彼の母は水戸藩の士族出身の娘でしたが、尾津が2歳の時に家庭を離れ、以降の消息は不明です。仮に一時的に安定した家庭があったとしても、尾津の成長には様々な制約がありました。府立第三中学校に合格しますが、継母の反対に遭い、入学できずに家を出る決断を下します。

的屋としての活動

職を転々とした後、尾津は的屋組織の飯島一家に加入することで、人生の新たな一歩を踏み出しました。彼は右翼団体「皇国決心団」を組織し、摂政宮の車列警備を妨害したブラジル公使に対して抗議行動を起こすなど、積極的な活動を行いました。その後、新宿で関東尾津組を結成し、組織の拡大を図ります。

関東尾津組は当初から地域に影響を与え、多摩川沿岸や八王子・川越までを縄張りに持っていました。しかし、1930年には弟分の高山春吉が尾津の刺客によって命を落とし、1932年には殺人教唆の罪で宮城刑務所に収監されるという波乱が訪れます。尾津は1941年に仮出獄しますが、彼の人生は決して平坦ではありませんでした。

戦後の闇市と治安維持

第二次世界大戦が終わった後の混乱期に、尾津は新宿駅東口の焼け跡に青空マーケットの「新宿マーケット」を立ち上げます。「光は新宿より」のキャッチフレーズで人々を惹きつけ、その活動は多くの露天商に影響を与えました。この時期、尾津は当時の淀橋警察署署長と密接な関係を築き、1945年には東京都露天商同業組合理事長に就任し、“街の商工大臣”と呼ばれるようになります。

尾津は、新宿マーケットを中心に戦後の混乱期における治安の維持に貢献。外国勢力との対立や私鉄争議の調停を努め、他の的屋や露天商と連携しながら、地域の治安を守る役割も果たしました。彼は孤独な戦いをしながらも、街の人々と密接に関わりを持ち、影響力を高めていったのです。

政治活動とその後

1946年には衆議院議員に立候補し、自由党に入党するものの、公認は得られず落選。その後も継続して活動を行い、闇市の検挙などで逮捕され服役しますが、1952年にはサンフランシスコ平和条約による恩赦により解放され、新たな事業を開始します。

尾津商事株式会社を設立し、さまざまなビジネスに取り組む中で、元法務府長官から日刊『万朝報』の題字使用権を購入し、復刊を果たします。しかし、この活動は結局、恐喝罪で摘発されることとなり、1954年には廃刊に追い込まれます。

最期と家族

尾津喜之助は1977年に越谷の自宅で逝去しました。長女の尾津豊子は、映画の子役として活躍後、著書を出版し、父の人生をもとにした物語を語り継いでいます。彼の生涯は反響を呼び、新宿やその周辺の歴史に深く刻まれた存在となりました。尾津喜之助の波乱に富んだ物語は、時代の変遷と共に語り継がれています。

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