尾畑裕

尾畑 裕

1958年に石川県金沢市で生まれた尾畑裕（おばた ひろし）氏は、日本の著名な会計学者です。特に原価計算と管理会計の分野で多大な貢献をしています。一橋大学で学識を深め、同大学より博士（商学）の学位を授与されました。現在は明治学院大学経済学部経営学科の教授を務めるとともに、長年教鞭をとった一橋大学の名誉教授でもあります。

学歴とキャリア形成

尾畑氏は1982年に一橋大学商学部を卒業しました。その後、一橋大学大学院商学研究科の博士後期課程に進み、1987年に単位を取得して退学しました。学問の探求を続け、2000年には一橋大学から博士（商学）の学位を取得しています。

研究者としてのキャリアは、1987年に一橋大学商学部で専任講師として始まりました。その後、1991年には助教授に昇任し、1999年からは同商学部で教授として活躍しました。この間、1990年から1991年にかけては、ドイツのケルン大学経済社会学部企業計算論講座で在外研究を行い、国際的な視点からも知見を深めました。2022年には一橋大学を離れ、明治学院大学の教授に就任すると同時に、一橋大学の名誉教授の称号を得ています。

主要な所属大学以外にも、松山大学や早稲田大学で非常勤講師を務め、幅広い教育活動に携わりました。

研究と教育

尾畑氏の専門は、企業活動の効率化や意思決定を支援する原価計算および管理会計です。この分野における深い学識と研究成果は、多くの論文や著書として発表されています。単著として『ドイツ原価理論学説史』があり、また岡本清氏らとの共著による『管理会計』、山本浩二氏らとの共編著による『スタンダードテキスト 管理会計論』といった、専門分野の標準的な教科書や専門書を手がけています。

教育者としては、一橋大学などで長年にわたり会計学分野の重要な講義を担当しました。後進の育成にも力を注ぎ、岡本清氏に師事した自身の学統を継ぐ門下生として、高橋賢氏（横浜国立大学教授）、荒井耕氏（一橋大学教授）、岡田幸彦氏（筑波大学准教授）、日吉雄太氏（公認会計士、元衆議院議員）などが挙げられます。

学会活動と受賞

学術界における尾畑氏の貢献は、学会活動にも顕著に現れています。日本原価計算研究学会では会長を務め、同学会の発展に尽力しました。また、日本会計研究学会の理事としても活動しました。これらの学会活動を通じて、研究成果の発表、研究交流の促進、若手研究者の育成などに貢献しています。

その卓越した研究業績は高く評価され、数々の権威ある賞を受賞しています。

1996年：日本会計研究学会学会賞
2000年：日本会計研究学会太田黒澤賞
* 2000年：日本原価計算研究学会学会賞

公的活動

尾畑氏は、学術分野だけでなく、社会に対しても多岐にわたる貢献を行っています。過去には公認会計士試験委員として、会計専門家の育成と資格制度の維持向上に携わりました。また、国の審議会や委員会の委員を歴任しています。

具体的には、2007年から総務省の電気通信紛争処理委員会（旧称：電気通信事業紛争処理委員会）の委員を務め、電気通信事業における公正な競争環境の整備や利用者利益の保護に関与しました。さらに、2011年からは防衛省の防衛調達審議会委員として、国の防衛に関わる調達の適正化に貢献し、2021年には防衛調達審議会会長代理を退任するにあたり、これまでの功績に対して防衛大臣から感謝状が授与されました。直近では、2023年に産業経理協会の理事長に就任し、実業界と学術界の連携強化や産業経理の発展にも寄与しています。

研究、教育、学会活動、そして公的な役割と、多方面から日本の会計学の発展と社会への貢献を続ける第一人者です。

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