尿道括約筋

尿道括約筋

尿道括約筋（にょうどうかつやくきん、Urethral sphincter）は、ヒトを含む哺乳類の尿道に存在する重要な筋肉の一つです。この筋肉は、特に解剖学的な視点から「尿道括約筋」と呼ばれますが、その機能的な側面、すなわち生理学の分野では外尿道括約筋という名称が用いられることが一般的です。これは、尿道の壁にはもう一つ、無意識に働く筋肉（内尿道括約筋、平滑筋）が存在することと対比して、明確に区別するための呼び方です。

位置と構造

この筋肉は、骨盤の下部にある骨盤底の一部を構成する会陰隔膜と呼ばれる筋膜構造に位置しています。具体的には、尿道がこの会陰隔膜を貫通する部分を取り囲むように存在しています。尿道括約筋は、私たちが手足を動かす際に使う筋肉と同じ骨格筋の一種です。骨格筋であるということは、私たちの意思によってその働きをある程度コントロールできる、つまり「随意筋」であることを意味します。

主な機能

尿道括約筋の最も重要な役割は、蓄尿と排尿のメカニズムにおいて、尿道の開閉を調節することです。

蓄尿時: 膀胱に尿が溜まっている間、尿道括約筋は通常、意識的な制御のもとで収縮した状態を保っています。この収縮によって尿道がしっかりと閉じられ、膀胱内の尿が意図せずに体外へ漏れ出すのを防いでいます。これは、公共の場などで排尿を我慢する際に、私たちが意識的に力を入れている部分にあたります。
排尿時: 排尿を始めたいとき、私たちは意識的に尿道括約筋を弛緩させます。この弛緩によって尿道が開き、膀胱が収縮することによって尿が体外へと排出されます。排尿の途中で流れを止めたい場合や、排尿を終える際には、再び尿道括約筋を収縮させます。

このように、尿道括約筋は膀胱に続く尿道出口の「弁」のような働きをしており、その開閉を私たちの意思でコントロールすることで、排尿のタイミングや開始・終了を調節する極めて重要な役割を果たしています。

神経支配

尿道括約筋の働きは、陰部神経（ぷでんしんけい、Pudendal nerve）という体性神経によって支配されています。体性神経は、主に感覚情報や随意運動に関わる神経であり、この陰部神経の支配があるからこそ、尿道括約筋は私たちの意識的な指令によって収縮したり弛緩したりすることができるのです。陰部神経は仙髄（脊髄の下部）から出て、骨盤領域を経て会陰部に分布しており、尿道括約筋だけでなく、会陰部の他の筋肉や感覚にも関与しています。

性別による特徴

特に女性においては、尿道括約筋の構造が外尿道口（尿道の体外への開口部）を直接取り囲むような配置になっています。この配置は、外尿道口を物理的に保護する役割も果たしていると考えられています。男性においても同様の機能を持つ筋肉は存在しますが、解剖学的な構造や尿道の長さの違いから、女性における保護的な側面がより強調されることがあります。

まとめ

尿道括約筋は、会陰隔膜に位置する随意性の骨格筋であり、陰部神経の支配を受けています。その主たる機能は、尿道を閉じたり開けたりすることで、蓄尿状態を維持し、排尿を意識的に制御することです。この筋肉の健全な機能は、適切な排尿習慣を維持し、尿失禁などの問題を予防する上で非常に重要です。また、この筋肉は解剖学的には尿道括約筋、生理学的には外尿道括約筋とも呼ばれます。

関連する筋肉として、膀胱からの尿の排出に関わる他の筋肉、特に尿道内壁にある不随意筋（内尿道括約筋）や、膀胱自体の筋肉（膀胱排尿筋）などがありますが、尿道括約筋（外尿道括約筋）は、これらの協調的な働きの中で、意識的な排尿調節の最終的なゲートキーパーとしての役割を担っています。

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