属七の和音

属七の和音は、クラシック音楽をはじめとする西洋音楽において、極めて重要な役割を担う四和音です。「属音上の七の和音」として定義されることが多いですが、その名称にとらわれず、特定の音程関係で構成される和音全般を指します。この和音の最大の特徴は、その内に秘めた不安定な響きと、それゆえに安定した響きの和音へと自然に移行しようとする強い指向性（「解決」と呼ばれます）にあります。

構成音

属七の和音は、根音に対し以下の四つの音から構成されます。

根音
長3度上の音
完全5度上の音（この音は省略されることもあります）
短7度上の音

これらの音程関係によって生まれる響きが、属七の和音独特の性質を与えています。例えば、ハ長調における属七の和音は、属音であるト（G）を根音とするG7和音となり、構成音はG、B（ロ）、D（ニ）、F（ヘ）となります。BはGから長3度、Dは完全5度、Fは短7度です。

響きの特徴と不協和性

属七の和音は、一般的に不協和音として扱われます。その不協和性の主な原因は、構成音である根音からの長3度音と短7度音の間に存在する音程にあります。この二つの音の間は減5度（または増4度）となり、「トライトーン」と呼ばれる、非常に不安定で解決を強く求める響きを持ちます。このトライトーンが存在することで、属七の和音は聴く者に緊張感を与え、安定した響きの和音、とりわけその根音から完全4度上（あるいは完全5度下）の主和音への解決を期待させます。

純正律において、第7音は理論上7/4の周波数比を持つことがありますが、これは実用上ほとんど使われることはありません。なぜなら、この比率は調和しすぎるために解決へ向かう動機付けが弱まること、また、12平均律で調律された一般的な楽器では正確に実現することが難しいという理由からです。

主な用法と解決

属七の和音は、西洋音楽の中で最も頻繁に用いられる不協和音であり、その最も代表的な用法は、楽曲の調における属音上の七の和音（V7）として主和音（I）へ解決する進行です。このV7→Iの進行は、楽曲の終止や区切りを作る上で極めて重要な役割を果たします。

例えば、ハ長調のV7和音であるG7（構成音：G, B, D, F）が主和音C（構成音：C, E, G）へ解決する場合、G7の不安定な響きを持つB音は主和音の根音Cへ半音上行し、F音は主和音の第3音Eへ半音下行します。このように、トライトーンを形成する二つの音が、それぞれ半音で解決先の和音の協和音へと移行することが、V7→I進行における強い安定感と終止感を生み出します。

V7→Iという基本的な解決形に加え、属七の和音はその根音から完全4度上（または完全5度下）にある長三和音や短三和音へ解決するという性質を利用して、様々な和音進行や転調に用いられます。例えば、主和音以外の和音を一時的な主和音と見立て、その属七の和音として使用する「副次ドミナント」という用法も頻繁に見られます（例：II7→V、I7→IVなど）。短調においても、和声的短音階を用いて作られる属七の和音（V7）が主和音へ解決する進行は、長調の場合と同様に終止において重要です。

属七の和音の持つ不安定さと解決への指向性は、楽曲に推進力と色彩感を与え、音楽表現の多様性を豊かにしています。転回形も含め、多様な形で楽曲の中で活用されています。

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