属人区

属人区（ぞくじんく）とは

属人区とは、カトリック教会における組織形態の一つで、属人区長、司祭団、信徒によって構成されます。地理的な区分に基づく従来の教区とは異なり、特定の司牧ニーズに応えるため、教皇によって設置される、より柔軟な組織です。信者は、属人区と同時に、居住する教区にも所属します。

属人区の概要

従来の教区は地域を基準に区分されますが、属人区は、移民、職業、典礼など、地理的ではない基準で区分されます。第二バチカン公会議で提唱された新しい法形態であり、「司祭の生活と役務に関する教令」において、社会階層に応じた専門的な司牧活動を可能にするため、「特殊教区や属人区」の設置が提言されました。

公会議は、キリスト教の教えを広めるための新しい形態を模索していました。属人区は、現代社会のニーズに応え、教会がその使命を果たすための組織として誕生しました。従来の教会組織は、信者の居住地域に基づいていましたが、属人区は、信者と教会との繋がりを、地理的な制約を超えて実現します。

例えば、移民や特定の典礼を重んじる信者は、居住地に関わらず、同じ属人区に所属できます。軍人向けの軍属区も、属人的な組織の一例です。

属人区の構成と特徴

属人区は、属人区長（教皇によって任命される）、在俗司祭からなる司祭団、そして一般信徒によって構成されます。属人区長は、司教であることもそうでないこともありますが、裁治権を持って統治を行います。属人区は、教会の位階制に属する組織であり、霊的な指導を通して、信者がそれぞれの地域教会（司教区）に所属しながら、その使命を果たすことを支援します。

属人区は、修道会や信徒団体とは異なり、教会法と固有の規約によって規定されます。カトリック教会法典には、属人区に関する詳細な規定があります。

オプス・デイ：唯一の属人区

現在、属人区として認められているのは、オプス・デイのみです。これは、属人区という形態が比較的新しく、設立には教会の承認と、設立される教区との調和が必要であるためと考えられます。軍属区のような類似の組織は存在しますが、属人区とは異なる位置づけです。

オプス・デイが属人区となるまで

教皇パウロ6世の時代から、オプス・デイを属人区とする検討が始まり、準備作業を経て、1982年に教皇ヨハネ・パウロ2世によって正式に属人区として認められました。同時に、当時のオプス・デイの総長であったアルバロ・デル・ポルティーリョが属人区長に任命されました。

属人区への所属

属人区には、信徒も司祭も所属します。教会では、すべての信者がキリスト者として平等な尊厳と使命を持ちますが、司祭職は特別な役割を担います。司祭と信徒は、それぞれの役割において協力し合い、教会の使命を達成します。

教皇ヨハネ・パウロ2世は、オプス・デイの信徒が、地域教会と属人区の両方に所属することで、福音宣教の義務を果たすと述べています。属人区は司祭のみが所属する組織ではなく、信徒との協力が不可欠です。

オプス・デイには、「聖十字架司祭会」という司祭の会も存在します。この会は、司祭の霊的生活を指導し、司牧活動を支援するもので、属人区の司祭と、オプス・デイへの召命を受けた教区司祭が参加します。教区司祭は、この会を通じて、教区での活動を豊かにし、教会に貢献します。

属人区の信者は、それぞれの教区に所属しながら、教区司教との繋がりを保ちます。

属人区と属人教区の違い

属人区はオプス・デイのみですが、カトリック教会には、属人教区という類似の組織も存在します。属人教区は、元聖公会の信者の司牧を目的として設置されたもので、属人教区長、司祭団、信徒によって構成されます。組織の精神や設置理由は異なりますが、どちらも地理的な区分を超えて、信者の霊的ケアと福音化を目的としています。

日本では、元聖公会の信者が、オーストラリアに本部を置く「南十字星の聖母の属人教区」に所属しています。

西洋語では区別される「属人区」と「属人教区」ですが、日本語では「属人教区」を「属人区」と呼ぶこともあります。

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