履行不能

履行不能についての詳細

定義と概要

履行不能とは、債務の履行が不可能になる状況を指します。この概念は法律において重要であり、契約当事者間での権利や義務に影響を与えます。履行不能には大きく分けて「原始的不能」と「後発的不能」の2つの形態があります。

原始的不能

原始的不能は、債務が契約を締結した時点でそもそも不可能であった場合を示します。この場合、ローマ法に基づく原則「不可能なことは債務ではない」が適用され、債務は成立しません。特に、双務契約の場合は、双方の履行が関連しているため、片方の約束が無効となると、もう一方の約束も消滅します。ただし、契約当事者の信頼に基づく無駄な支出を放置しないため、過失に基づく損害賠償を求めることは可能です。

後発的不能

後発的不能は、債務が成立した後に、不可抗力や物の滅失などにより履行が不可能になる場合です。このような場合の法律の扱いは、その原因と当事者の帰責事由により異なります。

債務者に帰責事由がある場合

もし履行不能が債務者の責任によるものであれば、債務不履行となり、損害賠償責任を負うことになります。債権者は原則的に契約解除ができ、反対給付を免れることができます。

債権者に帰責事由がある場合

債権者に帰責事由がある場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わないため、履行が可能でも免れることはありません。債権者には解除権が発生せず、契約に基づく給付を求め続けることができます。

両者に帰責事由がない場合

不可抗力や法令改正など、どちらの当事者にも責任がない場合も履行不能と見なされます。この場合は、債権者は反対給付を拒否でき、無催告解除権が生じる場合があります。

平成29年改正民法施行以降の変更点

令和2年4月1日から施行された民法改正により、原始的不能と後発的不能の区別が廃止されました。今後は「履行不能」として統一的に扱われ、仕様によっては債権者の履行請求権が消滅することがあります。債務者の責任が生じる場合は依然として損害賠償を求めることができる一方、債権者による解除権も強化されています。

まとめ

履行不能は、債務の履行が不可能になることを指し、これに伴う法律の取り扱いは複雑ですが、各当事者の責任の所在によってその影響が大きく異なります。現行法では、原始的不能と後発的不能が統合され、よりシンプルに理解できるようになっています。法改正に伴う変更内容について理解を深めることが、契約の円滑な履行を促進する鍵となります。

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