山下早苗

山下 早苗（やました さなえ）は、日本の看護学を牽引する研究者であり、教育者です。特に小児を対象とした看護、中でも小児がん看護、看護実践における倫理、そして次世代を育成するための看護教育を専門分野としています。現在は、静岡県立大学看護学部において学部長および教授として、また大学院看護学研究科の教授としてもその手腕を発揮しています。

山下氏のキャリアは、まず看護師として始まりました。1988年4月に防衛医科大学校病院の看護部に所属し、小児病棟で看護業務に携わりました。臨床現場での経験を積んだ後、教育の道へと進みます。1993年5月からは、防衛医科大学校高等看護学院の講師として、これから看護師を目指す学生たちの指導にあたりました。

教育者としての活動と並行して、研究者としての研鑽も積みました。香川医科大学大学院医学系研究科で学び、2003年3月に修士課程を修了し、修士の学位を取得しました。その後、大分県立看護科学大学看護学部の助教を経て、2007年4月には鹿児島大学医学部の講師に着任。主に保健学科で教鞭を執りました。また、鹿児島大学大学院保健学研究科にも籍を置き、博士後期課程で研究を深めました。この期間に執筆した博士論文のテーマは、「小児がんの子どもへの病名・病状説明に対して親が抱く不確かさ」という、臨床的にも重要な課題に関するものでした。2011年3月、この研究成果により、鹿児島大学から博士（保健学）の学位が授与されました。

博士号取得後、2015年4月には以前勤務した経験のある防衛医科大学校に戻り、医学教育部の看護学科で教授に就任しました。ここでは小児看護学の講座を担当し、高度な専門知識を持つ看護師の育成に力を注ぎました。同年4月からは、静岡県立大学看護学部の講師としても非常勤で教鞭を執り、活躍の場を広げます。

そして2018年4月、静岡県立大学へ正式に移籍し、看護学部の教授に就任しました。静岡県立大学では、主に看護学科で小児看護学の講義を担当しています。また、同時に大学院看護学研究科の教授も兼務しており、看護学専攻の学生たちの指導にもあたっています。現在は学部長として、学部全体の運営と発展にも貢献しています。

研究活動においては、自身の専門分野である小児がん看護、小児看護における倫理、そして小児看護教育に関する多岐にわたるテーマに取り組んでいます。特に、小児がんに罹患した子どもたちとその家族に対する質の高い看護ケアに関する研究は広く知られています。さらに、未来の看護専門職を育成する上で不可欠な、看護学生の道徳的な感受性を育む研究や、子どもを対象とする看護教育の効果的な手法の開発にも力を注いでいます。

国内での教育・研究活動に加え、国際的な貢献も行っています。国際協力機構（JICA）がウズベキスタンで実施する「看護教育改善プロジェクト」に専門家として参加し、現地の看護教育の質の向上に寄与しました。ウズベキスタン保健省が策定する教案プログラムの作成にも関わり、国際的な視点から看護学の発展に貢献しています。

看護師としての豊かな臨床経験と、教育者・研究者としての深い探求心を持つ山下早苗氏の活動は、小児看護分野の発展に大きく貢献しており、その今後の更なる活躍が期待されています。

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