山下欣一

山下欣一（1929年2月5日 - 2021年）は、日本の民俗学者、文化人類学者であり、特に奄美の民俗学とユタ研究において重要な貢献をしました。彼は奄美大島の名瀬町（現在の奄美市）で生まれ、幼少期から故郷の文化に深く触れて育ちました。

教育の過程では、旧制鹿児島県立大島中学校から加治木中学校へと転校し、その後、鹿児島農林専門学校獣医畜産科を卒業しました。教職に就いた後、早稲田大学法学部に編入しましたが、家庭の事情で中退し、再び教員として鹿児島に戻りました。1966年にはアメリカ合衆国へ渡り、インディアナ大学民俗学研究所でセミナーを受講するなど、民俗学への関心を深めていきました。

その後、鹿児島県立大島工業高等学校教諭を経て、鹿児島経済大学（現・鹿児島国際大学）沖縄文化研究所、社会福祉学部教授を歴任しました。1981年には、長年の研究成果である「奄美説話の研究」で國學院大學から文学博士号を授与されました。2005年には伊波普猷賞を受賞、2016年には南日本文化賞を受賞するなど、その業績は高く評価されています。晩年には、鹿児島国際大学名誉教授の称号を得ました。

山下欣一の研究は、南島の民俗・文化、特に奄美群島の説話やユタへの聞き取り調査に焦点を当てています。彼はユタの呪詞を体系化し、その文化的意義を明らかにしました。1974年からは、奄美の人々自身が島の独自性を学ぶ「奄美学」を提唱し、地域文化の振興に尽力しました。

また、海外の民話集の翻訳にも取り組み、異文化理解にも貢献しました。さらに、ユタの説話を基にした児童文学作品も手掛け、子どもたちに地域の文化や物語を伝えました。

彼の著作には、以下のものがあります。

『たいようの子マタラベ 沖縄・奄美の民話』
『奄美のシャーマニズム』
『奄美説話の研究』
『南島説話生成の研究 ユタ・英雄・祭儀』
『南島民間神話の研究』

共編著としては、

『久永ナオマツ嫗の昔話 奄美大島』
『沖縄・奄美の民間信仰』
『沖縄・奄美の歳時習俗』
『大和村の昔話 鹿児島県大島郡大和村』
『奄美文化を探る 文芸・民俗・歴史からのアプローチ』
『奄美六調をめぐって 徳之島から』
『南島の文学・民俗・歴史 『南島文学発生論』をめぐって』
『「青」の民俗学 谷川健一の世界』

翻訳作品として

エラ・イ・クラーク『アメリカ・インディアンの神話と伝説』
アニー・カー『パプアの民話』
C.I.Chinas-Baron『ベトナムの民話』
* 『ものいうバナナ 南太平洋の昔ばなし』

これらの著作や研究活動を通じて、山下欣一は奄美の文化と民俗を広く伝え、後世の研究者や地域の人々に大きな影響を与えました。彼の業績は、民俗学、文化人類学の分野において、今後も重要な研究資料として活用されていくでしょう。

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