山下財宝

山下財宝：伝説と真相に迫る

山下財宝とは、第二次世界大戦末期に、山下奉文大将率いる日本軍がフィリピンに埋めたとされる莫大な埋蔵金に関する都市伝説です。その真偽を巡り、長年にわたり様々な憶測や発掘騒動が繰り広げられてきました。伝説の背景、実態、そして関連する出来事を詳しく解説します。

伝説の誕生

フィリピンで語り継がれる伝説によれば、東南アジア各地から日本軍が徴発した金塊が、シンガポールを経由して日本本土へ輸送される予定でした。しかし、連合国軍による海上輸送路への攻撃が激化したため、フィリピン国内に隠されることになります。敗戦後、関係者が戦犯として処刑されたため、財宝の隠し場所に関する情報が失われたとされています。

また、「山下財宝は、日本が世界各地から略奪した財宝の一部である」という説も存在します。これは、スターリング・シーグレーヴの著書「ヤマト王朝」や「Gold Warriors」によって広まったフィクションが、事実として誤って認識されたものです。これらの作品に登場する「金の百合」と呼ばれる架空の財宝を巡るストーリーが、多くの人々に真実であるかのように信じられています。

実際に、アメリカ領フィリピンでアメリカ軍が日本軍に降伏した際、アメリカ植民地政府やアメリカ軍がジャングルに隠匿したニッケル・インゴットや、日本軍占領後にフィリピンに入植した日本人が、引き揚げ時に現地に埋めた財産などが発見された事例もあります。これらの事実が、山下財宝伝説に真実味を与えた要因の一つと考えられます。

財宝の実態

大本営の情報参謀を務めた堀栄三の著書によると、山下財宝は、東南アジアから徴発した金塊ではなく、フィリピンにおけるアメリカ軍の偽造通貨による経済攪乱に対抗するため、日本から送られた「マル福」と呼ばれる特製の金貨だったとされています。この金貨は、フィリピンの華僑系財閥から物資調達の協力を得るために用いられました。

1944年2月、2万5千枚のマル福金貨が日本本土から空輸され、マニラに保管されました。アメリカ軍のルソン島上陸後、約1万5千枚がバギオへ輸送され、その後、北部山中に移送されたと推定されています。残りの約1万枚は、バギオ以外の拠点や各部隊に分配されました。

終戦後、マル福金貨は日本国内でも流通し、現在でもコイン店などで購入可能です。ただし、贋作も多く、歴史的に真正なものであるかどうかの鑑定は困難です。

発掘をめぐる出来事

1969年12月、マニラ近郊の山中で金塊が発見されたとの噂が広まりましたが、実際には日本軍の遺物が見つかっただけでした。2018年6月には、カポネス島で違法な採掘を行った日本人らが逮捕されています。

イメルダ・マルコスは、夫であるフェルディナンド・マルコス元大統領が山下財宝を発掘して財をなしたと主張しましたが、フィリピン政府はこれを真剣に受け止めていません。

財宝の所有権

財宝探しをめぐるトラブルが頻発しているため、フィリピン政府は山下財宝探しの規制を強化しています。発見された場合の権利配分は、文化遺産と判断された場合は国が全て没収、公有地で発見された場合は政府が75%、発掘者が25%、私有地で発見された場合は政府が30%、発掘者と地主が70%となっています。

山下財宝は、今もなお多くの人々の関心を集める謎に満ちた伝説です。その真実が明らかになる日は来るのでしょうか。

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