山内豊明

山内豊明は、土佐中村藩の再興後の第3代、そして最後の藩主です。寛永19年（1642年）に初代藩主である山内忠直の次男として生を受けました。当初、兄の豊定から3000石を分与されていましたが、延宝5年（1677年）に兄・豊定が急逝。その嫡子・豊次がまだ幼かったため、豊明が養子として家督を継ぐことになりました。

特筆すべきは、第5代将軍徳川綱吉の寵愛を受けたことです。元禄2年（1689年）4月14日には奥詰衆となり、同年5月3日には若年寄に任じられるという異例のスピード出世を果たしました。しかし、そのわずか7日後の5月10日、豊明は病気を理由に若年寄の辞職を願い出ます。その理由は「放心状態で目も見えず、耳も聞こえない」というものでした。この行動は、将軍への不敬とみなされ、綱吉の怒りを買い、5月12日には江戸屋敷を召し上げられ、謹慎を命じられるという事態に陥りました。

8月3日には謹慎を許されたものの、その代償として、3万石あった所領のうち2万7000石を没収されるという厳しい処分を受けました。残りの3000石で寄合旗本としての存続を許されましたが、大名から寄合への格下げを良しとしなかったため、再び綱吉の怒りを買い、改易されるという憂き目に遭いました。その後、身柄は浜松藩の青山家に預けられることとなりました。

元禄5年（1692年）6月2日、豊明は赦免され、土佐藩内の小高坂に居住することになります。元禄17年（1704年）1月17日に63歳でこの世を去りました。

豊明が若年寄の辞任を申し出た背景には、当時の藩財政の窮乏がありました。若年寄就任に伴う出費が、さらに藩の財政を圧迫することを恐れたためだとされています。また、赦免後に豊明が住んだ場所は、現在「大膳様町」という町名として、その名を残しています。

山内豊明の生涯は、時の権力者との関係、藩の財政状況、そして自身の立場との間で翻弄された、波乱に満ちたものでした。

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