山口幹幸

山口 幹幸（やまぐち みきゆき）

日本の建築行政において重要な役割を果たしてきた山口幹幸氏は、1951年に埼玉県で生まれました。建築への道を志し、1974年に日本大学理工学部建築学科を卒業しています。一級建築士および不動産鑑定士の資格を有し、専門家としての幅広い知見を背景にキャリアを築きました。

東京都庁での多岐にわたる貢献

大学卒業後、東京都に入庁した山口氏は、長きにわたり都市整備や住宅政策の中枢に携わります。そのキャリアの中で、住宅局住環境整備課長や大規模総合建替計画室長を務め、都民の住環境向上に向けた政策立案と実行に尽力しました。また、建設局では再開発課長や区画整理課長を歴任し、都市構造の更新と土地利用の最適化を推進。大規模かつ複雑な都市開発プロジェクトにおいて、調整役として手腕を発揮しました。

東京都庁を離れた後も、目黒区都市整備部参事やUR都市再生企画部担当部長として、地方自治体や独立行政法人の立場から都市再生に貢献。再び東京都庁に戻り、都市整備局の建設推進担当部長、民間住宅施策推進担当部長といった要職に就き、都心部の開発促進や多様な住宅ニーズへの対応といった課題に取り組みました。

主な業績とプロジェクト

山口氏が関わった主なプロジェクトは多岐にわたります。文化施設としては、江戸東京博物館の計画段階に関与。都市再生の分野では、北新宿や環状2号線周辺における大規模な再開発事業、さらには汐留や秋葉原といった地域の土地区画整理事業において、中心的な役割を果たしました。これらの事業は、古くなった市街地の再生だけでなく、交通インフラの整備や新たな都市機能の導入に大きく貢献しました。

阪神・淡路大震災発生後には、東京都内の木造密集地域における防災性の向上を目指した「防災都市づくり推進計画」の策定と実行に深く関与。災害に強いまちづくりに向けた重要な一歩を踏み出しました。また、南青山におけるPFI方式を活用した都営住宅事業や、既存の大規模団地の総合的な建替計画、新たな都営住宅の建設など、公共住宅の整備と管理にも貢献しました。目黒区においては、池尻大橋駅周辺の再開発と首都高速道路のジャンクション一体開発という、高度な調整を要するプロジェクトを推進。さらに、高齢者向け住宅やマンションなど、民間部門と連携した多様な住宅供給施策にも携わりました。

研究活動と著作

2011年4月からは大成建設理事として、民間企業の立場から建築・都市開発に貢献しています。

山口氏は実務経験に裏打ちされた知見を活かし、研究活動や執筆活動も精力的に行っています。特に、都市計画、住宅政策、不動産、まちづくりに関するテーマでの共著が多く、その著作は専門家や研究者の間で高く評価されています。

主な共著には、人口減少社会における住宅政策や地域再生のあり方を論じた『人口減少時代の住宅政策』、『地域再生 人口減少時代の地域まちづくり』、都市における空き家問題に焦点を当てた『都市における空閑地・空き家を考える』、老朽化したマンションの建替え問題を扱った『マンション建替え：老朽化にどう備えるか』などがあります。これらの著作は、日本の都市や住宅が直面する現代的な課題に対し、実践的な視点からの提言を行っています。

特に注目すべきは、複数の著作が学術賞を受賞している点です。『都市における空閑地・空き家を考える』は不動産学会賞を、『地域再生 人口減少時代の地域まちづくり』と『マンション建替え：老朽化にどう備えるか』は都市・住宅学会賞を受賞しています。また、『マンション建替え：老朽化にどう備えるか』は不動産学会賞および日本地域学会賞も受賞しており、一冊で三つの学会賞を受賞するという快挙を達成しています。さらに、『環境貢献都市 東京のリ・デザイン』も不動産学会賞、『東京モデル―密集市街地のリ・デザイン』、『不動産開発事業のスキームとファイナンス（2）』といった著作でも都市・不動産分野への貢献を示しています。古い著作としては、1998年の『密集住宅市街地のまちづくりガイドブック』や、大規模団地建替、汐留開発に関する論文なども知られています。

山口幹幸氏は、建築行政家として、また都市・住宅分野の研究者として、長年にわたり日本の都市基盤整備と住宅政策の発展に貢献してきた人物と言えます。その実務経験と研究成果は、今後のまちづくりにおいても重要な示唆を与え続けています。

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