山岸哲

山岸 哲（やまぎし さとし）氏は、1939年3月15日に長野県須坂市に生まれ、日本の鳥類学界を牽引してきた第一人者です。理学博士の学位を持ち、現在は山階鳥類研究所の名誉所長を務めています。

長野県長野高等学校を経て、1961年に信州大学教育学部を卒業した山岸氏は、学究の道へと進みました。大阪市立大学理学部教授、そして京都大学大学院理学研究科教授を歴任するなど、大学における鳥類学の研究および教育に長年尽力し、多くの後進を育成しました。

学会活動においても指導的な役割を果たしており、1993年から1997年までの期間、日本鳥学会の会長を務めました。さらに、公益財団法人山階鳥類研究所においては、2002年に所長に就任し、日本の鳥類研究の中心的な機関を率いました。2010年3月に所長を退任した後は、名誉所長として研究所に貢献を続けています。

山階鳥類研究所での活動と並行して、大学での教育にも継続的に携わりました。2005年には東京農業大学客員教授、2008年からは新潟大学特任教授を務めるなど、幅広い教育機関で教鞭をとりました。

また、鳥類の保全活動にも深く関与しています。2010年10月からは兵庫県立コウノトリの郷公園の園長に就任し、絶滅の危機に瀕しているコウノトリをはじめとする希少鳥類の保護・繁殖・野生復帰に向けた取り組みに力を注いでいます。

長年にわたる鳥類学への顕著な貢献が認められ、1999年には第8回山階芳麿賞を受賞しました。これは、鳥類研究の発展に寄与した研究者や団体に贈られる権威ある賞です。

一般への鳥類学の普及にも熱心であり、2003年5月1日から2004年4月30日にかけて、『朝日新聞』朝刊の第1面にてコラム『けさの鳥』を連載しました。この連載を通じて、身近な鳥から珍しい鳥まで、その生態や魅力、鳥を取り巻く環境問題などについて分かりやすく語りかけ、多くの読者に鳥への関心を深めるきっかけを与えました。

山岸氏は、その豊富な知識と経験を多くの著書や編著としても発表しています。専門書から一般向けの解説書まで多岐にわたり、日本の鳥類学の発展と普及に大きく貢献しています。主な編著書には以下があります。

『モズの嫁入り 都市公園のモズの生態をさぐる』（大日本図書、1981年）
『鳥類生態学入門 観察と研究のしかた』（築地書館、1997年）
『けさの鳥』（朝日新聞社、2004年）
『聴いて楽しむ野鳥100声 野鳥おもしろ雑学事典』（インプレス、2004年）
『鳥類学辞典』（昭和堂、2004年）
山階鳥類研究所 編『保全鳥類学』（京都大学学術出版会、2007年）
『日本の希少鳥類を守る』（京都大学学術出版会、2009年）
『日本書紀の鳥』（京都大学学術出版会、2022年）

教育、研究、保全、そして一般への普及活動と、様々な側面から日本の鳥類学に多大な貢献を続けている研究者です。

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