山形ワイン

山形ワインは、山形県で醸造されるワインの総称であり、その生産量は日本国内で4位を誇ります。2021年には、地理的表示「山形」として認定され、品質の高さが広く認められました。山形県は、日本酒や米沢牛など、様々な特産品で知られていますが、ワインもまた、その一つとして重要な位置を占めています。

概要

山形県は、ブドウ栽培に適した気候と土壌に恵まれており、古くからブドウ栽培が行われてきました。現在では、県内17のワイナリーで、多種多様なワインが造られています。山形ワインは、その多くが県内で収穫されたブドウのみを使用しており、ブドウの品種もデラウェアやメルローなど51品種に限定されています。アルコール度数は7.0度以上20度未満と定められており、厳しい基準をクリアしたワインのみが「山形ワイン」として販売されています。

特徴

山形ワインの特徴は、その多様性にあります。

白ワイン

白ワインは、花や柑橘系の華やかな香りが特徴で、ブドウ由来のアロマも感じられます。豊かな酸味が、爽やかな余韻をもたらします。

赤ワイン

赤ワインは、ブドウのアロマと熟成香が調和し、爽やかな酸味と穏やかな渋みが特徴です。バランスの取れた味わいが楽しめます。

これらの特徴は、山形県の気候風土と、生産者の丁寧な仕事によって生み出されています。

生産量

山形県ワイン酒造組合によると、年間約2200トンの山形県産ブドウを原料に、約1500キロリットルのワインが生産されています(2021年時点)。生産されたワインのほとんどは国内で消費されており、海外への輸出量はごくわずかです。

歴史

前史

山形県でのブドウ栽培の歴史は古く、江戸時代初期まで遡ることができます。南陽市川樋地区の大洞山にブドウの木が植えられたのが始まりとされています。大洞山にブドウが植えられた理由には、以下の二つの説があります。

甲州（現在の山梨県）から来た鉱山労働者が、故郷の土地との共通点を見出し、ブドウを植えた。
出羽三山を往来する修験者が、ブドウを持ち込んだ。

明治・大正時代

明治時代になると、殖産興業政策の一環として、ブドウ栽培とワイン醸造が奨励されました。1873年には、高畠町に勧業試験場が設けられ、ヨーロッパ系のブドウ品種の栽培が始まりました。1897年には、高畠町産のシャスラが全国博覧会で最優秀賞を受賞するなど、山形県におけるワイン造りの礎が築かれました。

1887年（明治20年）には、酒井弥惣が赤湯でブドウ園を開墾し、1892年（明治25年）にはワイン醸造を開始。今日の酒井ワイナリーとなりました。また、奥羽南線（現在の奥羽本線）の開通は、ワインの流通を促進し、ブドウ栽培が盛んになる一因となりました。大正初期には、フィロキセラの被害によるブドウ生産量の低下がありましたが、接ぎ木苗の普及により生産は回復しました。

第二次世界大戦の影響

第二次世界大戦中には、軍需物資としてロッシェル塩（酒石酸カリウムナトリウム）が必要とされたため、ワイン製造が奨励されました。しかし、この時期に生産されたワインは、品質よりも量産が優先され、味が劣悪なものが多かったとされています。南陽市では、戦時中に60軒あったワイナリーが、戦後には4軒にまで減少しました。

第二次世界大戦後

戦後、山形県のワイン産業は新たな局面を迎えます。1951年には、長野県の五一ワインの創業者である林五一が、南陽市の須藤ぶどう酒工場を訪れ、メルローの苗木を持ち帰ったことで、桔梗ヶ原にメルロー栽培が根付くきっかけとなりました。また、大手メーカーの下請けとしてワインを製造するワイナリーも存在し、品質向上に貢献しました。1973年には、老舗清酒蔵であった浜田合資会社が、ワイン醸造の研究に着手し、欧州系ワイン醸造品種の栽培を始め、1976年には本格的辛口テーブルワイン「シャトーモンサン」を発売しました。

平成

1990年には、長野県塩尻市の大田葡萄酒が酒造免許を移転し、高畠町に高畠ワインを創業しました。これは、本坊グループのワイン事業の一環でした。また、構造改革特別区域法や総合特別区域法によって「ワイン特区」が誕生し、新規ワイナリーの設立が容易になりました。

2017年には、サローネグループが南陽市にグレープリパブリックを開業し、無添加にこだわったワイン造りを始めました。これにより、山形県のワイン産業はさらに発展を遂げています。

山形ワインは、その長い歴史の中で、様々な困難を乗り越え、独自の進化を遂げてきました。現在では、高品質なワインが数多く生産され、国内外から高い評価を受けています。山形県の風土が育むワインの魅力を、ぜひご堪能ください。

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