山猫 (映画)

映画『山猫』の魅力

『山猫』（やまねこ、Il gattopardo）は1963年に公開されたイタリア・フランス合作映画で、監督はルキノ・ヴィスコンティです。この作品は、イタリアの貴族の衰退を描いた小説を基にしており、全8章のうち第6章までが映画化されています。ヴィスコンティが初めてイタリアの貴族社会をテーマにした本作は、その後のヴィスコンティの作品における重要な転機となりました。

映画の背景と制作

本作は、作家ジュゼッペ・ランペドゥーサが自らの体験をもとに執筆した唯一の長編小説を基にしています。映画は貴族の衰退と新しい時代への適応をテーマにしており、「ヴィスコンティが唯一自身を語った作品」としても評価されています。特に本作は、第16回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、国際的に高い評価を得ることになりました。

制作過程では、20世紀フォックスから長すぎると批判を受け、161分の英語国際版が製作され、各国で短縮版が公開されたものの、1981年にオリジナル版の185分版が上映されました。その後、2003年には40周年を記念した完全復元版が発表され、2004年に日本でも公開されました。

あらすじ

物語は19世紀半ば、イタリア統一戦争のさなかのシチリア島が舞台です。物語の主役は、名家の当主であるファブリツィオ公爵で、彼は家族と共に貴族としての伝統を守りながら生きています。ファブリツィオの甥のタンクレーディは新たな時代に適応すべく、ガリバルディの軍に加わります。シチリアを去るブルボン王朝や、新たに権力を手にした市長セダーラの姿を冷ややかに見つめるファブリツィオ。

タンクレーディはセダーラの娘アンジェリカに恋をし、ファブリツィオは彼らの結婚の仲人を務めることになります。しかし、タンクレーディは次第に新政府に取り込まれていきます。ファブリツィオは新政権から貴族院議員に推挙される提案を受けますが、彼はシチリアの人々が変化を望んでいないことを理解し、杉山セダーラの推薦に回ります。

物語は続き、近隣の公爵の屋敷で行われる舞踏会のシーンが印象的です。このシーンでは、実際のシチリア貴族の末裔たちがエキストラとして登場しており、豪華な演出が際立っています。舞踏の名手であるファブリツィオが美しいアンジェリカと踊る姿は、観客を魅了しました。

映画の特徴

『山猫』では撮影時に自然光が使用され、室内では多数の蝋燭が点火されることで独特の雰囲気を醸し出しています。シーンには汗にぬれた俳優たちの真剣な表情が映し出されており、そのリアルさが物語の緊迫感を高めました。また、衣装や小道具も歴史的な精度をもって復元されており、その努力が映画の質をさらに向上させています。

まとめ

映画『山猫』は、シチリアの貴族の衰退と新たな時代の波を描いた作品で、監督ヴィスコンティの深い人間理解が反映されています。美しい映像と独特の雰囲気の中で繰り広げられる人間ドラマは、多くの人々に長く記憶に残ることでしょう。

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