山田尚勇

山田尚勇（やまだ ひさお）は、1930年に生まれ、2008年5月21日に亡くなった日本の情報処理学者です。東京大学の名誉教授であり、情報処理の分野で大きな貢献をしました。彼の業績の中でも特に知られているのが、キーボードの無連想式漢字直接入力方式（T-Code）の発案です。

山田は東京府（現在の東京都）で生まれましたが、幼少期を日本統治下の台湾で過ごしました。1945年の終戦後、長野県に引き揚げ、旧制松本二中に編入しました。その後、旧制松本高校を経て、東京大学工学部に進学しました。

大学卒業後、フルブライト奨学生としてアメリカに渡り、ペンシルベニア大学で電気工学を学びました。大学院では修士号と博士号を取得し、研究者としてのキャリアをスタートさせました。ペンシルベニア大学では教鞭も執り、その流暢な英語力から「日系2世か」と間違われるほどでした。

アメリカでの研究生活を経て、1972年に東京大学理学部の教授に就任しました。その後、学術情報センター（現在の国立情報学研究所）の副所長も務め、日本の情報科学の発展に尽力しました。また、中京大学情報科学部の教授も歴任し、教育にも貢献しました。

山田は、国際標準化機構（ISO）の仕事で海外出張も多く経験しました。しかし、2000年にドイツ出張後、体調を崩し、肺がんが発覚。手術を受けましたが、2005年には余命宣告を受けました。それでもなお、旧制松本高校や中学の同窓会に出席するなど、精力的に活動を続けました。

彼の著書には、『コンピュータと人間の共生―コンピュータによる障害者支援の展望』、『漢字民族の決断―漢字の未来に向けて』、『コンピュータ科学者がみた日本語の表記と入力』などがあり、情報科学や日本語表記に関する深い洞察を示しています。

また、論文では、「技術革新と日本語のゆくえ ヒューマン・インタフェースの視点から」や「コミュニケーションツールとしてのドキュメントの重要性 アメリカでの体験を通して」などを発表し、情報技術と人間の関係について考察を深めています。

山田尚勇は、その生涯を通じて情報科学の発展に貢献し、多くの研究者や学生に影響を与えました。彼の功績は、日本の情報科学史において重要な位置を占めています。

主な略年譜

1947年：旧制松本第二中学（現長野県松本県ヶ丘高等学校）卒業
1950年：旧制松本高等学校理科乙類卒業
1953年：東京大学工学部電気工学科卒業
1956年：ペンシルベニア大学電気工学部修士号取得
1960年：ペンシルベニア大学電気工学部博士号取得
1960年～1962年：米国ゼネラルダイナミクス社研究員
1961年～1962年：米国ロチェスタ大学応用数学科非常勤講師
1962年～1966年：米国IBMワトソン中央研究所研究員
1966年～1972年：米国ペンシルベニア大学電気工学部準教授
1972年～1991年：東京大学理学部教授
1988年：学術情報センター研究開発部長（現・国立情報学研究所）
1991年：東京大学理学部名誉教授
1994年：学術情報センター副所長（現・国立情報学研究所）
1996年：学術情報センター名誉教授（現・国立情報学研究所）
1996年～2001年：中京大学情報科学部教授
2001年：中京大学情報科学部非常勤講師

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