山谷ブルース

岡林信康の原点『山谷ブルース』と『友よ』

岡林信康の初期を代表する楽曲として知られる『山谷ブルース』と『友よ』。この2曲は、1968年にシングルとしてリリースされ、岡林のデビューを飾った。社会の底辺で生きる人々を描いた歌詞や、フォークソングでありながら演歌調のメロディを取り入れた斬新なスタイルは、当時の音楽シーンに大きな衝撃を与えた。

『山谷ブルース』

誕生秘話

『山谷ブルース』は、岡林自身が日雇い労働者として働いていた山谷での経験をもとに作られた。歌詞は、山谷に暮らす日雇い労働者の心情を独白する形で表現されており、そのリアリティあふれる描写は、聴く者の心を深く揺さぶる。この曲の原型は、同志社大学神学部の平賀久裕が、当時流行していた扇ひろこの「新宿ブルース」の替え歌として作ったもの。平賀は、岡林とともに山谷に滞在していた際に、この歌の原型を制作した。

その後、平賀が作った詩は、山谷で共に働いていた田頭道登によって自費出版された『山谷のキリスト者』に掲載され、岡林の手に渡った。岡林は、この詩を基に補作を行い、『山谷ブルース』を完成させた。最初にできた詩と、岡林が補作した詩では、1番以外は大幅に変更されている。

音楽的特徴

『山谷ブルース』は、フォークソングでありながら、演歌のような節回しが特徴的だ。この独特な音楽性は、岡林が幼少期から賛美歌に親しんでいたことや、高石友也のアルバムに収録されていた演歌調の楽曲に影響を受けたことが背景にあるという。また、当時岡林がギターで弾くことのできないコードがあったため、弾けるコードだけで作曲されたというエピソードも、ファンの間では語り草となっている。

エピソード

『山谷ブルース』のヒット後、ビクターレコードからヒット賞として贈られた子犬のブロンズ像を、岡林は平賀にプレゼントした。平賀はそれを大層喜び、毎晩のように行きつけの居酒屋で飾って楽しんでいたという。また、ビクターレコードは岡林を森進一のような演歌歌手として売り出そうとしたが、当時所属していた高石音楽事務所がこれを拒否したという逸話も残っている。

『友よ』

『友よ』は、『山谷ブルース』と両A面でリリースされた楽曲で、岡林信康とフォークグループ「フォーク・キャンパーズ」のメンバーである鈴木孝雄との共作である。この曲は、友情をテーマにしたもので、多くの人に愛され続けている。詳細は「友よ」を参照のこと。

カヴァー

『山谷ブルース』は、岡林信康本人の歌唱の他、数多くのアーティストによってカバーされている。中でも、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドによるロック調のアレンジは、広く知られている。その他、森進一、北原ミレイ、八代亜紀、鳥羽一郎、吉幾三など、ジャンルを超えた多くの歌手がこの曲をカバーしている。

収録アルバム

『山谷ブルース』と『友よ』は、以下のアルバムに収録されている。

わたしを断罪せよ 岡林信康フォーク・アルバム第一集 (1969年) - 別バージョンを収録
岡林信康URCシングル集 +8 (2013年)
岡林四十五景〜デビュー45周年記念ベスト盤 (2013年)
森羅十二象 (2018年) - セルフカバー版の「山谷ブルース」を収録

カバーアルバム

* 脱・どん底（1974年）- ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのセカンド・アルバム。「山谷ブルース」をカバー

まとめ

『山谷ブルース』と『友よ』は、岡林信康の音楽キャリアにおいて非常に重要な楽曲であり、日本のフォークソング史においても特筆すべき作品である。これらの曲は、社会の底辺で生きる人々の苦悩や、友情の尊さを描き出し、多くの人々の心に深く刻まれている。岡林信康の音楽を語る上で、決して欠かすことのできない2曲と言えるだろう。

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