山谷亨

山谷亨（やまや あきら）は、1976年5月8日に青森県青森市で生を受けた、日本の映像および舞台のクリエイターです。映画監督、演出家、そして脚本家として、そのキャリアは映像制作から舞台演出に至るまで、多岐にわたっています。

郷里の青森県立青森高等学校を卒業した後、東京都に位置する成蹊大学文学部日本文学科に進学し、知的な探求を深めました。大学を卒業してからは、映像制作の現場へ身を投じることを選びます。

最初のキャリアは、ある映像制作会社で始まりました。ここでは、テレビ番組や映画、さらにはオリジナルビデオといった多種多様なプロジェクトに関わる中で、演出、撮影、編集、助監督といった映像制作の根幹をなす技術と実務を網羅的に経験しました。この時期に培われた幅広いスキルと知識が、後のフリーランスとしての活動を支える強固な基盤となります。

制作会社での経験を経て独立した山谷氏は、フリーランスの演出家として本格的に活動を開始します。映画、オリジナルビデオ、そしてCMといった様々なメディアの作品を手がける一方で、彼の持つユニークな才能の一つとして挙げられるのが「字書き」としての役割です。映画やCMの画面を飾るタイトルロゴや、劇中に登場する文字などを手書きで担当し、作品の世界観に深みを与える美術的な貢献も行っています。

また、山谷氏のキャリアを語る上で外せないのが、特撮・幻想文学の世界で知られる故・実相寺昭雄監督ゆかりのクリエイターたちとの交流です。実相寺監督が関わった株式会社コダイとゆかりのある、服部光則氏、映画監督の高橋巖氏、清水厚氏といった方々との共同での制作機会が多く、日本のユニークな映像表現の系譜に連なる人脈の中で活動しています。

監督としての主な作品には、共同で脚本も手がけたサスペンス色の強いオリジナルビデオ『ブルーバレンタイン２〜隠されたペンダントの秘密〜』（2011年）があります。さらに、自身で脚本も兼任した作品として、『未来への第一歩』（2015年）、『過去からのメッセージ』（2016年）、そして故郷への思いを込めた『故郷狂詩曲～Country Rhapsody～』（2016年）などがあります。幕末の志士に焦点を当てた『RYOMA 空白の三か月』（2018年）では、原案と監督を兼任しました。

映画以外でも、テレビ番組制作にも積極的に関わっています。東京都練馬区とJ:COMが連携した地域密着型のアニメ関連番組『ねりたんアニメワークス』（2007年）では構成と演出を、『ネリマアニメウォーク』（2008年）では総合演出を務めました。また、テレビ埼玉の『いのり・エネルギーの映画缶』やBS11デジタルの『キラキラACTERS TV』でも演出を手がけています。

近年では、インターネット動画の分野にも活躍の場を広げています。世界的に人気のあるキャラクター、エルモが登場するウェブシリーズ『セサミストリート：ELMO IN JAPAN〜』（2015年〜2016年）では、制作全体の進行管理を担うラインプロデューサーを務めました。

映像メディアだけでなく、舞台の世界でもその演出手腕を発揮しています。2012年には、俳優の千葉真一氏がかつて企画し、映画『柳生一族の陰謀』の原案ともなった「裏柳生」を舞台化した『裏YAGYU』で演出を担当し、話題を集めました。2016年の舞台『トレジャー』では、潤色と演出を兼任。この舞台では、山谷氏の出身地である青森県の自然風景などがイメージ映像として用いられ、作品に個人的なタッチを加えています。

その他の活動としては、自主制作ながら特撮映画の巨匠に光を当てたドキュメンタリー『監督 本多猪四郎〜日本特撮映画を支えた男〜』（2008年）で企画、構成、演出を担当。さらに、アーティストの映像作品や、漫画原作の実写プロモーションビデオの演出など、その活動範囲はジャンルや形式を問わず非常に多岐にわたっています。

このように、山谷亨氏は映画、テレビ、オリジナルビデオ、CM、ネット動画、そして舞台と、様々なメディアを股にかけて、監督、演出家、脚本家、編集技師、撮影スタッフ、プロデューサー業務、そして字書きといった多様な役割を高いレベルでこなす、希有なクリエイターと言えるでしょう。その多才さと柔軟性をもって、日本のエンターテインメントシーンにおいて独自の存在感を示しています。

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