山里勝己

山里勝己（やまざと かつのり）氏は、1949年沖縄県本部町に生まれ、アメリカ文学研究において卓越した業績を残した学者、そして名桜大学学長として教育界にも大きく貢献した人物です。

琉球大学英語英文科卒業後、ハワイ大学マノア校、カリフォルニア大学デービス校と、アメリカの名門大学で英米文学を学び、修士号、博士号を取得しました。

1975年から琉球大学法文学部で助手、教授、副学長と要職を歴任し、その間、日本文学環境学会会長や九州アメリカ文学会会長など、学術団体でも指導的な役割を果たしました。2013年には名桜大学教授、国際文化研究科長に就任し、翌年には学長に昇任。長年にわたり、教育者、研究者として精力的に活動されています。

山里氏の研究分野は多岐に渡り、アメリカ文学、とりわけゲーリー・スナイダーの研究では高い評価を得ています。スナイダーの著作を数多く翻訳しており、その思想を日本に紹介する役割を担いました。

著書『場所を生きる ゲーリー・スナイダーの世界』は、スナイダーの思想を分かりやすく解説した入門書として高く評価され、多くの読者にスナイダーの世界観を広めました。また、2010年に出版された『琉大物語 1947-1972』は、アメリカ合衆国政府の支援によって設立された琉球大学の歴史を詳細にたどり、貴重な資料となっています。この作品では、戦後の沖縄における大学の役割、そして社会情勢が克明に描かれています。

しかし、『琉大物語』は、琉球大学における「第一次琉大事件」「第二次琉大事件」と呼ばれる学生運動に関する記述において、大学側の責任について曖昧な表現を用いたとして、批判を受けることとなりました。これらの事件は、米軍統治下の沖縄において、学生たちの自由と民主主義への希求、そして大学のあり方について深く問いかける出来事でした。この点については、異なる解釈も存在し、議論の余地があります。

山里氏の著作活動は『琉大物語』だけにとどまりません。共編著として『戦後沖縄とアメリカ 異文化接触の五〇年』、『アメリカン・パノラマ 変容する社会と文化』など、沖縄とアメリカの関わり、アメリカ文化の多様な側面に迫る著作を数多く発表しています。さらに、『〈移動〉のアメリカ文化学』、『アメリカ文化55のキーワード』といった、アメリカ文化研究の体系的な理解を助ける書籍も著し、研究者として多大な貢献を果たしました。

山里氏は、単なるアメリカ文学研究者としてだけでなく、沖縄という土地の歴史、文化、そして人々の生き様を深く理解し、それを研究活動に反映してきたことが分かります。その学問的貢献は、アメリカ文学にとどまらず、沖縄研究、そして比較文化研究といった分野にも大きな影響を与え続けています。今後の活動にも、更なる期待が寄せられています。

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