山野忠彦

山野忠彦の生涯と樹医としての業績

山野忠彦（やまの ただひこ）は、1900年6月25日に生まれ、1998年9月25日に亡くなった日本の樹医です。彼は日本で初めて自らを樹医と名乗り、全国各地の巨木や名木を枯死から救う活動を行いました。その活動は今も多くの人々に影響を与えています。

来歴

彼は大阪府で誕生し、商売を営む家庭に育ちました。母親は早くにこの世を去り、その後すぐに実業家である養父に引き取られました。幼少期に韓国に移住し、養父が経営するガソリン販売の石油代理店で育った経験は、彼の価値観や人生観に多大な影響を与えました。後に中央大学に入学しましたが、学業を続けることなく、新しい娯楽を求めて自由な生活を選びました。ただし、彼は兵役検査を受けた際に養父の名前が知られ、その後自分の内向的な性格に気づくこととなりました。

1926年、義父の死によって突然の富を手にした忠彦は、事業を継ぐことなく、他の活動に没頭することに決めました。彼は多くの人々を雇い、朝鮮の山々を探索する日々を送りましたが、資産は急速に減少しました。そこで彼は不動産業に目を向け、友人から資金を借りて土地を購入しました。この不動産投資は成功し、彼は再び富を築くことができました。それにより、ソウルの郊外に50万坪の村を建設し、地主兼村長としての役割を果たしました。

しかし、太平洋戦争末期には大きな損失を被り、当時20億円の資産を全て放棄することになりました。戦後、大阪に引き揚げると、進駐軍から依頼されて日本の山にある鉱石の分布調査を行いました。調査中、荒廃した森林の姿に深い悲しみを覚えたことから、彼は樹医になることを決意します。これは彼が48歳の時の出来事でした。これ以降、彼の人生は樹木治療に捧げられることとなりました。

樹医としての活動

忠彦は昼間は研究に没頭して夜間は仕事をこなすというハードな生活を送り始めました。1964年には大阪市公園課の臨時職員として木の治療に関わり始め、1969年からは全国各地を巡り樹木の治療に取り組みました。彼が治療した木の本数は1988年までに1000本を超え、その中には静岡県磐田市の行興寺にある「熊野の長藤」や奈良県法隆寺の「法隆寺の松」といった著名な木々も含まれます。

受賞歴と影響

山野忠彦はその功績により、1986年には朝日森林文化賞、1988年には吉川英治文化賞、1991年には環境庁地域環境保全功労者賞を受賞しました。また、1990年には公共広告機構のCMにも出演し、「日本で初めての木のお医者さん」として広く知られるようになりました。

著書

彼の活動や理念を知るための貴重な資料として、1989年には『木の声がきこえる─樹医の診療日記』を講談社から出版しました。これは樹医としての専門的な視点を持ちながら、自然との調和や木々への愛情を語る内容となっています。山野忠彦の努力と情熱は、多くの人々に感動を与え、環境保護の重要性を再認識させるきっかけとなったのです。

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