山際きみ佳

山際きみ佳（やまぎわ きみか）は、日本のオペラ界で活躍するメゾソプラノ歌手の一人です。欧文ではKimika Yamagiwaと表記されます。

三重県四日市市に生まれ育った彼女は、地元の三重県立四日市高等学校を卒業後、愛知県立芸術大学の声楽専攻へと進学しました。大学で声楽の基礎を学び、さらに同大学院に進み、専門的な知識と技術を深めました。この時期に培われた高度な音楽的素養が、その後の歌手活動の基盤となります。

学生時代からその才能は広く認められ、第68回全日本学生音楽コンクールの名古屋大会では見事に第1位を獲得しました。この受賞は、彼女が将来オペラ歌手として大きく飛躍する可能性を予感させるものでした。また、平成26年度には北野生涯教育振興会の奨学生にも選ばれるなど、学業と並行して自身のキャリア形成に向けた努力を着実に行っていました。

大学院修了後、山際きみ佳は2015年から2019年にかけて、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールの声楽アンサンブルに在籍しました。この期間は、プロのオペラ歌手としての実践経験を積む上で非常に重要な時期となりました。びわ湖ホールという国内有数の劇場に身を置くことで、様々なオペラ作品の制作プロセスに深く関わり、舞台人としての心構えや、他の歌手との協調性、アンサンブル能力を磨きました。

びわ湖ホール声楽アンサンブル在籍期間中、彼女は数多くのオペラ公演に出演し、メゾソプラノ歌手として多様な役柄を演じ、その表現力の幅を示しました。具体的には、2015年12月にはチェコの作曲家ドヴォルザークによる幻想的なオペラ『ルサルカ』にて外国の王女役として舞台に立ちました。翌2016年3月には、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した不朽の名作『フィガロの結婚』において、思春期の少年貴族ケルビーノという、高度な演技力と歌唱力が求められる難役を見事に演じ、好評を博しました。同年8月にはフランスの作曲家マスネによるオペラ『ドン・キホーテ』に出演し、ヒロインであるドゥルシネ役を務め、その歌声で観客を魅了しました。

びわ湖ホールでの活動は続き、2018年2月にはドイツの作曲家フンパーディンクによるメルヘン・オペラ『ヘンゼルとグレーテル』にて、タイトルロールの一つであるヘンゼル役を生き生きと演じました。同年9月には再びモーツァルト作品に挑み、『ドン・ジョヴァンニ』において、純朴で可憐な農娘ヅェルリーナ役を繊細な表現で演じました。これらの役柄への挑戦は、彼女のメゾソプラノとしての声域の可能性と、役柄に応じた表現の多様性を示すものでした。

びわ湖ホールでの活動以外でも、彼女は国内の主要な舞台で活躍の場を広げました。特に、2017年8月には東京にある新国立劇場の小劇場（中劇場）にて、イギリスの作曲家アーサー・サリヴァンと脚本家W.S.ギルバートによる人気オペレッタ『ミカド』に出演し、ピープボー役を務めました。これは、国内オペラ界の中心的な場所での経験として、彼女のキャリアにおいて重要な節目の一つとなりました。

2019年、山際きみ佳は自身の芸術性をさらに高めるため、そしてオペラの本場での経験を積むことを目指し、イタリアへと活動の拠点を移しました。オペラが根付くイタリアでの生活と学びは、彼女の音楽観や表現に新たな深みを与えています。渡伊後も積極的な演奏活動を展開しており、2020年2月にはイタリア有数の歌劇場であるトリエステ・ヴェルディ歌劇場にて、ロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキーによるオペラ『ボリス・ゴドノフ』に出演しました。この公演ではフョードル役を務め、イタリアの聴衆にその歌声を披露しました。これは、彼女の国際的なキャリアにおける重要な一歩となりました。

現在、山際きみ佳はイタリアを拠点に活動を続けており、その活躍はイタリア国内にとどまらず、国際的な舞台へと広がっていくことが期待されています。三重県出身の実力派メゾソプラノとして、今後の更なる飛躍が注目される存在です。

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