岡正光

岡 正光

福島県伊達郡保原町（現在の伊達市）に1947年6月30日に生まれた岡 正光は、左投げの投手として日本のプロ野球界に足跡を残した人物です。

彼の野球キャリアは、地元の福島県立保原高等学校で華々しい輝きを放ちました。高校時代、彼はチームのエースであり、同時に打線の中軸を担う四番打者としても活躍しました。特に、高校三年時の1965年夏の全国高等学校野球選手権大会福島県予選で見せた投球は、驚異的と評される内容でした。この大会を通じて、彼は合計51イニングを投げ抜きましたが、その間には27イニング連続無失点という記録も樹立しています。予選全体での奪三振数は75個を数え、許した失点はわずか2、自責点に至っては1点のみ。防御率は0.18という圧倒的な数字をマークし、その支配的なピッチング能力を示しました。この輝かしい成績を引っ提げ、チームは東北大会へと駒を進めます。東北大会決勝では、磐城高校を相手に9回裏に劇的な逆転サヨナラ勝利を収め、保原高校野球部史上初となる甲子園出場を決めました。

念願の甲子園の舞台では、2回戦が初戦となりましたが、高鍋高校のエース牧憲二郎との投手戦の末、残念ながら完封負けを喫し、大会を去ることとなりました。しかし、彼のピッチング、特に打者の手元で鋭く大きく落ちるカーブは、その決め球として多くの関係者の注目を集めました。

高校卒業後、岡は将来を嘱望される「貴重な左腕」として評価され、1965年のプロ野球ドラフト会議において、大洋ホエールズ（現在の横浜DeNAベイスターズ）から堂々のドラフト1位指名を受け、プロの世界へとその一歩を踏み出しました。しかし、彼のプロ野球選手としての道は、不運にも短く険しいものとなりました。

実は、プロ入り契約を交わす以前に、岡は左肘に故障を抱えていたのです。球団側はその事実を十分に把握していなかったとされています。プロの世界に入ってからも、彼は懸命にこの故障からの回復を目指し、トレーニングに励みました。しかし、残念ながら左肘の状態が完全に回復することはなく、高校時代の勢いや球威を取り戻すことは叶いませんでした。この影響により、プロ野球選手としての一軍公式戦のマウンドに立つ機会は、ついぞ訪れませんでした。

結果として、岡正光のプロ野球での現役生活は、わずか数年で幕を閉じることとなります。1966年に入団し、背番号は当初「10」を着用しましたが、1967年からは「43」に変更。しかし、一度も一軍で登板することなく、1968年シーズン限りで現役を引退しました。高校時代に見せた輝かしい実績と、プロでの不本意なキャリアは、野球界における故障の影響の大きさを物語る例の一つと言えるでしょう。彼の名前は、福島県出身のプロ野球選手、そして大洋ホエールズに在籍した選手の一人として、記録に残されています。

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