岡田憲久

岡田憲久（おかだ のりひさ、1950年 - ）は、日本の造園および作庭分野において多大な貢献をしてきた専門家です。大阪府に生まれた岡田氏は、信州大学農学部で造園の基礎を学び、1974年に卒業しました。卒業後、約五年の歳月を京都で過ごし、伝統的な庭師のもとで実地に技を磨きました。この京都での修行期間は、氏のその後の作庭活動における重要な礎となりました。

実務経験を積んだ後、1989年には自身の設計事務所である景観設計室タブラ・ラサを設立し、独立した活動を開始しました。タブラ・ラサでは、個人邸の庭園から大規模な公共空間の景観設計まで、幅広いプロジェクトを手がけています。また、1992年からは教育者としてのキャリアもスタートさせ、名古屋造形芸術短期大学（後に名古屋造形大学）に着任。同大学で助教授、教授を歴任し、造園デザインや景観設計に関する知識と技術を多くの学生に伝えてきました。現在は同大学の名誉教授として、後進の育成に貢献し続けています。

岡田氏の作庭および景観設計の活動は多岐にわたります。文化財庭園の修復・整備は氏の重要な活動分野の一つであり、三重県指定文化財である蓑虫庵や専修寺庭園、鈴鹿市指定文化財の伊勢型紙資料館庭園、三重県指定文化財西諸戸邸庭園、岐阜県恵那市岩村町の勝川家庭園など、数多くの歴史的価値の高い庭園の保全と再生に尽力しています。これらの活動は、日本の伝統的な庭園文化を次世代に継承していく上で極めて重要です。

また、公共空間の創出にも積極的に関わっています。愛知県清須市の清洲城庭園、中部国際空港のアクセスプラザガーデン「瓦の庭」、名古屋市内の名古屋ルーセントタワーやアルペン丸の内タワーの公開空地、そして愛知県知多市の東邦ガス知多緑浜工場ランドスケープなど、都市における人々の生活空間を豊かにするデザインを数多く手がけています。特に、愛知県高浜市の名鉄三河高浜駅前ロータリーに作られた「瓦の庭 かい（海）」は、地域の特色である瓦を素材としてユニークに活用した作品として知られています。愛知県太田川駅周辺においては、どんでん広場や駅前広場、歩道など、2012年から2017年にかけて複数年にわたる大規模な都市空間整備プロジェクトに携わっています。さらに、多治見駅南地区での再開発事業におけるランドスケープ設計にも長期間にわたり関わっており、地域景観の向上に貢献しています。

国際的な活動としては、2002年にポーランドのソポート市で「Spirit of Japanese Garden」と題した講演を行い、また同市の日本庭園基本設計「月映の庭」を手がけるなど、日本の庭園文化を海外に紹介する活動も行っています。

教育、実務、そして文化財の保護という多角的な視点から日本の造園・景観分野に貢献してきた岡田氏は、その功績が認められ、2009年には日本庭園学会奨励賞と日本造園学会賞を、2013年には第29回都市公園コンクール国土交通大臣賞を受賞しています。著作としては、『景観と意匠の歴史的展開』（共著、1998年）、『日本の庭ことはじめ』（2008年）があり、研究者・教育者としての知見を発信しています。

岡田憲久氏は、伝統的な庭園技術と現代のランドスケープデザインを結びつけ、教育、文化財保全、公共空間の創出という多岐にわたる活動を通じて、日本の景観文化の発展に寄与し続けている第一人者と言えるでしょう。

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