岡田晋

この人物は、映画と映像に関する広範な知識と深い洞察に基づき、数多くの著作を発表しました。その業績は、単に映画史を記述するだけでなく、映画というメディアの本質、そしてそれが社会や人々の意識に与える影響を考察することにあります。

1957年に発表された『日本映画の歴史』は、初期の日本映画の歴史を丹念に辿り、その技術的側面、産業構造、そして芸術的価値を詳細に分析しました。この著作は、後の日本映画研究の基礎を築いたと言えるでしょう。1959年には『誰でも知りたい8ミリ映画の常識』を著し、アマチュア映画制作の普及にも貢献しました。同年に出版された『壁画からテレビまで 映画の新しい論理』では、映画というメディアの歴史を、壁画からテレビに至るまで、視覚文化全体の中で捉え、その普遍的な論理を探求しました。

1960年代に入ると、その関心は映画技術そのものにも及び、『現代 レンズとフィルムによる』（1963年、江藤文夫との共著）では、レンズとフィルムという映画の根幹をなす技術に焦点を当てました。また、『シナリオの設計』（1963年）では、映画制作における脚本の重要性を説き、『現代映像論』（1965年）では、より包括的な視点から現代映像を分析しました。

1966年には『映画理論入門』を著し、映画理論の基礎を体系的に解説しました。翌1967年には『日本映画の歴史 その企業・技術・芸術』を出版し、日本映画の歴史をさらに詳細に掘り下げています。1969年には『映像 人間とイメージ』を発表し、映像と人間の関係、特にイメージが人々の意識に与える影響について考察しました。このテーマは、後の著作にも引き継がれていきます。

1970年代に入ると、その研究テーマはより広範なものとなり、『映像未来学』（1970年）では、映像技術の未来の可能性について考察し、『映像ディスプレイ』（1971年）では、映像表示技術について深く掘り下げました。1972年には、日本人のイメージ構造に関する考察として、『日本人のイメージ構造』を発表しました。これは、日本人の意識や文化を理解する上で重要な著作と言えるでしょう。1974年には『映画の世界史』を著し、世界的な視点から映画史を捉え、映画が世界各地でどのように発展してきたかを解説しました。また、『映画と映像の理論』（1975年）では、映画と映像に関する理論的な枠組みを提示しました。

1980年代に入ると、映画史のより具体的な研究にも取り組み、『映画の誕生物語 パリ・1900年』（1980年）では、映画が誕生した当時の状況を詳細に描いています。1981年には『映像学・序説 写真・映画・テレビ・眼に見えるもの』を著し、映像学という新しい学問分野の確立を目指しました。1985年には、写真家の斉藤耕一との共同作業で、『遺跡と人間 イメージの旅』を出版し、イメージと歴史、文化の関係を探求しました。そして1987年、『映画学から映像学へ 戦後映画理論の系譜』では、戦後映画理論の変遷を辿り、映画学から映像学への発展を論じました。

これらの著作群は、映画史、映画理論、映像技術、そして文化論まで、幅広い分野に及んでおり、その思想は、映画研究者や映像制作者に多大な影響を与え続けています。この人物の業績は、映画と映像に関する深い知識と洞察、そしてそれらを社会や人々の意識と結びつける広い視野によって特徴づけられます。

もう一度検索