岡田章

岡田章（おかだ あきら）氏は、1954年3月4日に和歌山県新宮市に生まれた、日本の高名な経済学者です。特に、複雑な意思決定や戦略的相互作用を分析する「ゲーム理論」と、経済現象の背後にある法則を追求する「理論経済学」を専門分野としています。一橋大学名誉教授の称号を有しており、その研究活動は日本国内に留まらず、世界的な影響力を持っています。

岡田氏の学術的なキャリアは、数学とシステム科学の探求から始まりました。地元の和歌山県立新宮高等学校を卒業後、東京工業大学理学部数学科で学びました。さらに同大学の大学院総合理工学研究科に進み、システム科学専攻で修士課程を修了、その後博士課程で研鑽を積み、1982年に理学博士号を取得しました。この初期の数学的・システム科学的なバックグラウンドが、後の厳密なゲーム理論研究の基礎となっています。

博士号取得後、岡田氏は学術の道を歩み始めました。1982年に母校である東京工業大学理学部情報科学科の助手に着任。その後、1989年には埼玉大学大学院政策科学研究科（現政策研究大学院大学）に移り、講師、そして助教授を務めました。1991年には京都大学経済研究所の助教授となり、1996年には同研究所の教授へと昇進を果たします。関西の学術拠点である京都大学で、長期にわたり研究・教育に携わりました。

2004年からは、日本の経済学研究における主要な拠点の一つである一橋大学大学院経済学研究科の教授として活躍の場を移します。この時期、岡田氏は学界における重要な役割も担いました。2010年には、経済学研究の推進を目的とする東京経済研究センターの代表理事に就任。さらに、2014年6月からは約1年間にわたり、日本の経済学者を代表する組織である日本経済学会の第46代会長を務め、日本の経済学研究全体の発展に貢献しました。

一橋大学での活動と並行して、2015年10月には再び京都大学経済研究所の教授に着任し、翌2016年には同研究所の所長を兼任しました。また、同時期には一橋大学大学院経済学研究科の特任教授も務めるなど、複数の要職を歴任しました。

岡田氏のゲーム理論研究の功績は広く認められており、1999年には日本の若手経済学者にとって栄誉ある賞である日本経済学会・中原賞を受賞しています。この賞は、優れた経済学研究を行った若手研究者に贈られるものであり、岡田氏の当時の研究が高いレベルにあったことを示しています。

研究成果の普及にも力を注ぎ、数多くの著書を執筆しています。単著としては、『ゲーム理論』『経済学・経営学のための数学』『ゲーム理論・入門 人間社会の理解のために』『国際関係から学ぶゲーム理論 -- 国際協力を実現するために』『ゲーム理論の見方・考え方』などがあり、これらの著作は専門家だけでなく、経済学を学ぶ学生や一般読者にもゲーム理論の基礎から応用までを理解する上で非常に役立っています。また、今井晴雄氏との共編著『ゲーム理論の新展開』『ゲーム理論の応用』、鈴木基史氏との共編著『国際紛争と協調のゲーム』など、共同での研究成果や応用分野に関する書籍も多数出版しています。

2017年には長年貢献した一橋大学から名誉教授の称号が授与されました。キャリアの後半には、東京都在住であるため京都大学では会議への出席はあったものの授業は担当しないという勤務形態が特筆されます。2018年には京都大学において懲戒処分を受け、これを機に一橋大学特任教授を退職しました。そして翌2019年に京都大学も退職されました。

岡田章氏は、その卓越した理論分析能力と教育・普及活動を通じて、日本におけるゲーム理論研究の発展に多大な貢献をした研究者です。その業績は、今後もゲーム理論や理論経済学を学ぶ多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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