岡田豊

岡田 豊（おかだ ゆたか）氏は、元プロ野球選手であり、その後長年にわたりプロ野球審判員として活躍した人物です。旧名は哲男（てつお）。1932年9月12日、兵庫県に生まれました。

選手としてのキャリア

兵庫県立尼崎工業高等学校を卒業後、近畿大学に進学。近畿学生野球リーグでは、在学中にチームを7度優勝に導くなど、主力選手として活躍しました。特に1955年の春秋季リーグでは連続して首位打者に輝き、打撃面でも優れた能力を示しました。

1956年、捕手として当時の阪急ブレーブスに入団。プロ入り初年度から一軍での出場機会を得ます。1960年には、山下健選手と併用される形で、32試合で先発マスクを任されるなど、チームの一員として貢献しました。しかし、1961年に新たな捕手である岡村浩二選手が入団したことで出場機会が減少。同年限りで現役生活を終えることを決断しました。阪急ブレーブスでの現役期間中、背番号「4」を着用しました。

審判としてのキャリア

現役引退後、岡田氏はプロ野球の審判への道に進み、パ・リーグの審判部に入りました。ここから、彼の長きにわたる審判キャリアが始まります。冷静かつ的確なジャッジで信頼を重ね、パ・リーグにおける審判員として、史上初めて通算3000試合出場の金字塔を打ち立てる快挙を達成しました。最終的な通算出場試合数は3243試合に達し、これは当時のプロ野球における一つの記録となりました。

大舞台での経験も豊富で、日本シリーズには8回、オールスターゲームにも4回出場しました。特に1970年代から1980年代にかけては、パ・リーグを代表する名審判の一人として、その存在感を示しました。1977年にプロ野球審判員で袖番号が初めて採用された際、岡田氏は「3」という番号を割り当てられ、1993年に引退するまでこの番号を背負い続けました（この番号は後に別の審判員に引き継がれています）。

特徴的なエピソード

岡田氏には、そのキャリアの中でいくつかの印象的なエピソードがあります。

同時期にセ・リーグで活躍した元審判員の岡田功氏とは、姓が同じだけでなく、高校では岡田功氏が1年後輩にあたるという縁がありました。さらに興味深いことに、両氏がほぼ同時期に改名を行っていたという奇遇な一致もあったと言われています。

また、審判としてのユーモラスな一面を示すエピソードとして、1983年に西宮球場で行われた阪急対日本ハム戦での出来事が知られています。この試合で球審を務めた岡田氏は、プレーを始める際に審判のマスクを着用するのを忘れながらも、「プレイ」とコールしてしまうという珍事がありました。このハプニングは、同年から放送が開始され人気を博したテレビ番組『プロ野球珍プレー・好プレー大賞』で大きく取り上げられました。番組には岡田氏自身もゲストとして出演し、このエピソードについて語りました。その際、同じ年の日本シリーズ第7戦で球審を務めた際の映像も紹介され、自身の「プレイ」コールを再現するなど、ユーモラスな対応を見せ、視聴者に親しまれました。

岡田豊氏は、プロ野球選手としての短い期間を経て、審判としてグラウンドに立ち続け、パ・リーグの発展に大きく貢献しました。その確かなジャッジと、時折見せる人間味あふれるエピソードは、多くの野球ファンの記憶に残っています。

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