岩井正浩

岩井 正浩

岩井 正浩（いわい まさひろ）氏は、1945年5月20日に高知県で生まれた日本の音楽学者です。長年にわたり教育・研究機関で活動し、特に子どもの歌やわらべうたの研究分野で知られています。神戸大学の名誉教授でもあります。

経歴

岩井氏は、1969年に愛媛大学専攻科（音楽専攻）を修了した後、学術研究の道に進みました。まず東京藝術大学で研究員として勤務し、その後は愛媛大学の助教授に就任しました。

教育活動の中心は神戸大学に移り、教育学部の助教授として教壇に立ちました。その後、同学の発達科学部で教授を務め、多くの学生を指導しました。2011年に神戸大学を定年退官し、同大学から名誉教授の称号を授与されました。退官後も研究・教育への情熱は衰えず、愛知淑徳大学の教授としても教鞭を執りました。

研究と業績

岩井氏の研究活動の成果の一つとして、1995年に神戸大学で学術博士号を取得したことが挙げられます。彼の博士論文は「子どもの歌の音楽文化史的研究 日本伝統音楽を視座とした1900-1940年の展開」というテーマであり、このことから、日本の近代における子どもの歌がどのように展開してきたのかを、伝統音楽の視点から深く探求したことがうかがえます。この研究テーマは、彼のその後の著作活動にも一貫して見られます。

主な著作

岩井氏の主な研究成果は、数多くの著作として公表されています。子どもの歌やわらべうたに関するものが多く、その分野における第一人者としての貢献を示しています。

代表的な著書としては、わらべうたの伝承と創造について論じた『わらべうた その伝承と創造』（音楽之友社、1987年）や、ハンガリーの音楽教育と日本の比較を探る『ハンガリーの音楽教育と日本 フォライ・カタリンとの対話より』（音楽之友社、1991年）があります。また、自身の博士論文のテーマにも通じる『子どもの歌の文化史 二〇世紀前半期の日本』（第一書房、1998年）は、日本の近現代における子どもの歌の変遷を詳細にたどった重要な著作です。

さらに、わらべうたの持つ教育的・文化的意義に焦点を当てた『わらべうた・遊びの魅力』（第一書房、2008年）や、地元高知の文化であるよさこい祭りをテーマにした『これが高知のよさこいだ! いごっそとハチキンたちの熱い夏』（岩田書院、2006年）なども手掛けており、幅広い関心を示しています。

また、編著や共著の分野でも精力的に活動しています。初期の活動としては、地元のわらべうたをまとめた『えひめのわらべうた』（青葉図書、1975年、編著）や、合唱組曲の編曲・監修、日本音楽教育の歴史資料集の編集などがあります。後年には、わらべうたと言葉の教育の関係性を論じた大島清、大熊進子との共著『わらべうたが子どもを救う 教育の原点は「言葉みがき」』（健康ジャーナル社、2002年）や、音楽学の論考を集めた藤井知昭との共編著『音の万華鏡 音楽学論叢』（岩田書院、2010年）を発表するなど、共同研究や資料編纂にも貢献しています。

岩井正浩氏は、これらの教育、研究、著作活動を通じて、日本の音楽学、特に子どもの歌やわらべうたの研究分野において、重要な足跡を残しています。

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