岩国のシロヘビ

岩国のシロヘビ：神の使いと称えられた白蛇の物語

山口県岩国市に生息する岩国のシロヘビは、国の天然記念物に指定されている希少な白蛇です。その白い体色は、メラニン色素を生成できないアルビノという遺伝的特徴によるものです。通常、アルビノ個体は自然界では非常に稀であり、生存も困難です。しかし、岩国のシロヘビは例外的に高い頻度で出現し、代々その特徴を受け継いできました。

白化の謎：なぜ岩国ではシロヘビが多いのか？

アオダイショウのアルビノであるシロヘビは、劣性遺伝を受け継ぎます。そのため、アルビノ個体と通常個体の間に生まれた子供は、通常はアオダイショウと同じ体色になります。アルビノ個体は、白い体色が目立つため捕食されやすく、自然界での生存は容易ではありません。多くのアルビノ個体は、飼育下で系統を維持することで存在が確認されています。

では、なぜ岩国ではシロヘビが高い頻度で出現し、野生で維持されているのでしょうか？その理由として、古くから地域住民がシロヘビを神の使いとして大切に保護してきた歴史が挙げられます。この崇敬の念が、シロヘビの個体群維持に大きく貢献したと考えられています。

歴史と現状：保護活動の軌跡

シロヘビの生息記録は古く、『岩邑年代記』（1738年）にも記載があります。その後も、錦川流域の米倉周辺などで目撃情報が相次ぎました。1924年には「白ヘビ生息地」として天然記念物に指定され、1972年には「岩国のシロヘビ」として生物自体が天然記念物となりました。

かつては岩国市内各地に生息していましたが、生息地の都市化、ネズミ（シロヘビの餌）の減少、ネズミ駆除のための薬剤散布などにより、個体数は減少しました。そのため、1965年からは岩国市と岩国白蛇保存会が中心となり、繁殖・育成施設の設置など、積極的な保護活動が行われています。

2005年には保護活動下のシロヘビは約943匹でしたが、その後は減少傾向にあり、病気の流行なども影響しています。現在も、個体数維持のための努力が続けられています。

シロヘビ観光：地域の宝を未来へ

岩国市では、シロヘビを観光資源として活用する取り組みも進められています。今津町と横山地区には、シロヘビを観察できる施設があり、多くの観光客が訪れます。岩国駅周辺にも、シロヘビに関する説明板が設置されています。

白蛇を神聖視する伝承も残っており、脱け殻を財布に入れると金運が上がる、家屋に住み着くと家が栄えるなど、地域に根付いた信仰が現代にも受け継がれています。

結論

岩国のシロヘビは、自然と人間の関わり、そして生物多様性の保護の大切さを象徴する存在です。希少な生物の保護と、地域文化の継承という観点から、その存在意義は非常に大きいと言えるでしょう。今後も、保護活動と観光を両立させながら、岩国のシロヘビを未来へとつなげていくことが重要です。

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