岩本孫右衛門

岩本孫右衛門（いわもと まごえもん）は、慶長2年（1597年）に因幡国（現在の鳥取県）で生まれ、寛文8年（1668年）に没した武士です。本名を政利といい、剣術家・荒木又右衛門の門下で武術を磨きました。

生い立ちと武術の道

岩本孫右衛門は、因幡国高草郡岩井郷岩本村（現在の鳥取市金沢）で生まれました。岩本家の家系は、戦国時代の武将・山中鹿之助の家臣であった酒井孫六に遡ります。孫六は戦死しましたが、その子孫は岩本村で農業に従事し、孫右衛門はその末裔にあたります。孫右衛門は、息子である六助を連れて大和郡山に移り、荒木又右衛門に師事し、剣術の腕を磨きました。

鍵屋の辻の決闘

岩本孫右衛門は、師である荒木又右衛門と共に、「鍵屋の辻の決闘」に参加しました。この決闘は、渡辺数馬の仇討ちとして知られ、孫右衛門の息子である六助も父と共にこの仇討ちに参加しました。当時、六助は森姓を名乗っていましたが、後に父の姓である岩本姓を名乗るようになります。

鳥取藩士としての活躍

寛永15年（1638年）、岩本孫右衛門は鳥取藩に直参として仕官し、五人扶持を与えられました。その後、三十俵を支給され、中小姓として二十俵を加増されました。鳥取藩では養子を迎えると禄高を減額する「養子減り」という制度がありましたが、孫右衛門は「渡辺数馬家筋」であるとして、この制度の適用を免除されています。これは、彼の家系が仇討ちに関わった渡辺家と縁があったことを示すものです。また、岩本姓に改名したのは、旗本からの追及を避けるためとも言われています。

子孫と墓所

岩本孫右衛門の子孫は、代々鳥取藩に仕えました。五代目の平六（有賓）は、詩人として知られ、その作品は「鳥取藩史」にも記録されています。九代目の孫右衛門政勝は、鳥取藩の陸軍奉行を務め、廃藩置県を経験しました。十代目の芳八は、私立鳥取女学校の創立者として知られています。

岩本孫右衛門の墓は、鳥取市寺町にある光明寺にあります。十二代目の子孫は神奈川県横須賀市、十三代目の子孫は北九州市に在住しています。

岩本孫右衛門は、剣術家としての武勇だけでなく、藩士としての忠誠心、そして教育者としての功績など、多岐にわたる側面を持つ人物であったと言えるでしょう。

もう一度検索