岩波洋造

岩波洋造（いわなみ ようぞう、1926年5月20日 - 2023年12月31日）氏は、日本の植物学および花粉学の分野で多大な功績を残した研究者であり、教育者でした。横浜市立大学名誉教授として知られています。

長野県北安曇郡平村（現在の長野県大町市）に生まれた岩波氏は、旧制大町中学校（現長野県大町岳陽高等学校）、東京高等師範学校を経て、1954年に東京文理科大学生物学科を卒業しました。その後、さらに研鑽を積み、1961年には東京教育大学より理学博士の学位を取得しています。

学究の道に進んだ岩波氏は、横浜市立大学文理学部で教鞭を執り始め、講師、助教授と昇進を重ね、最終的には教授に就任しました。長年にわたり、同大学で多くの学生を指導し、植物学、特に花粉学の研究を深めました。1987年に定年退官を迎え、名誉教授の称号を授与されました。

岩波氏の研究領域は多岐にわたりますが、特に花粉学における貢献は特筆されます。専門書としては、初期の『花粉』（共立出版）や『花粉学大要』（風間書房）といった著作があり、この分野における日本の研究をリードしました。また、学術的な活動だけでなく、一般の人々に科学の面白さを伝えることにも情熱を注ぎました。講談社ブルーバックスシリーズをはじめとする多くの啓蒙書を執筆し、植物の生態、光合成、生物の形態美、植物の生殖など、幅広いテーマを分かりやすく解説しました。これらの著作には、『光合成の世界 地球上の生命を支える秘密』、『生命のデザイン 生物の造形美を見る』、『植物のSEX 知られざる性の世界』などがあり、科学知識の普及に大きく貢献しました。

さらに、「バイオアート」という、生物の持つ形態や機能美を芸術的に表現する試みにも早くから着目し、『バイオアート 生命のデザイン』といった著作を通じてその概念を紹介しました。これは、科学と芸術の境界を探求するユニークな取り組みでした。

その長年にわたる教育・研究活動と科学啓蒙への貢献が認められ、2006年には瑞宝中綬章を受章しています。

岩波洋造氏は、専門分野での深い探求と、科学を社会に開くための積極的な取り組みを通じて、日本の学術界と科学コミュニケーションに確かな足跡を残しました。2023年12月31日、97歳で逝去されました。

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